焼き肉や飲み会のあと、満腹のはずなのに不思議と食べたくなる「締めのラーメン」。じつはこの欲求には血糖値や脳の働きなど、体の仕組みが深く関係しています。なぜラーメンが食べたくなるのか、その理由を高石内科循環器クリニック院長の高石博史先生に聞きました。
※2025年10月取材。

監修医師:
高石 博史(高石内科循環器クリニック)
平成7年神戸大学医学部医学科卒業。神戸大学バイオシグナル研究センター研究員。加古川医療センター中央市民病院循環器内科医長、北播磨総合医療センター循環器内科主任医長、淀川キリスト教病院循環器内科部長、淀川キリスト教病院循環器内科主任部長・内科診療部長・地域医療連携センター長を歴任。循環器科・内科 不藤医院を継承し、高石内科循環器クリニックを開設。神戸大学医学部臨床教授、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会認定医、日本医師会認定産業医、日本心不全学会・日本不整脈学会認定ICD/CRT治療医、ICLS・JMECCインストラクター、難病指定医・身体障害指定医。
締めのラーメンが食べたくなるのはなぜ? 血糖値の問題?
編集部
おなかはいっぱいのはずなのに、お酒を飲むとなぜか最後にラーメンが食べたくなるのはなぜですか?
高石先生
肝臓は本来、血糖値を一定に保つ働きをしていますが、飲酒時はアルコールの分解を優先するため、血糖値の維持機能が一時的に低下します。その結果、血糖値が下がりやすくなり、体は低血糖状態に陥ります。そのため、脳はこのエネルギー不足を察知し、「すぐエネルギーになる炭水化物を摂れ」と強力な指令を出します。このメカニズムが、飲んだあとにラーメンを欲してしまう正体です。
編集部
お酒を飲んでいる最中も血糖値は下がっているのですか?
高石先生
アルコール度数や種類にもよりますが、分解が進むほど血糖値を維持する機能が阻害されます。とくに日本酒やビールなど糖質を含むお酒は、飲酒直後は血糖値が上昇しやすいのですが、飲酒後はアルコールが抜けてくるときに血糖値が下がることがあります。
編集部
締めにスイーツが欲しくなるのも同じ理由でしょうか?
高石先生
はい、根本的な理由は同じ「糖分不足」です。ただし、スイーツよりもラーメンが選ばれやすいのは、糖質だけでなく「塩分」への欲求も重なるからです。
ナトリウムやカリウム補給という側面も
編集部
塩分を欲するのは、どのようなメカニズムが関係しているのでしょうか?
高石先生
アルコールには強い利尿作用があるため、お酒を飲むと体内の水分と共に、ナトリウム(塩分)やカリウムといった電解質が大量に排出されます。とくにビールなどは飲んだ量以上の水分を排出させることもあり、体は一種の「脱水傾向」と「ミネラル不足」の状態に陥ります。そのため、失われた塩分を補おうとする生体反応が起こり、濃いスープのラーメンが欲しくなるのです。
編集部
お酒と一緒に水をたくさん飲めば、塩分への欲求は収まりますか?
高石先生
水分補給は非常に大切ですが、水だけでは排出されたナトリウムを補えません。例えばたくさん汗をかいたあとにも、少ししょっぱいものが欲しくなると思います。これは、汗と一緒に体内のナトリウムやカリウムも排出されてしまったからです。それと同じことが、お酒を飲んだ後の体内でも起きているのです。
編集部
そのほかにも、飲んだあとにラーメンが欲しくなる理由はありますか?
高石先生
「お酒を飲んだあとには締めのラーメン」という習慣が脳にインプットされているという側面もあるかもしれません。また、アルコールを飲むと胃の粘膜が刺激され、消化液の分泌が活発になります。その影響で、実際には十分に食べていても「まだ食べられそう」と感じやすくなります。また、お酒の影響で気分が高揚していることも関係しているかもしれません。
編集部
錯覚や習慣という側面もあるのですね。
高石先生
はい、とくに脂質を多く含むこってりしたラーメンは一時的に空腹感を和らげ、満足感を得やすいため、食べると落ち着いた感覚を覚えることがあります。その安心感が繰り返しの欲求につながり、「締めのラーメン」が習慣化しやすくなるのです。

