貧困の苦労も「経験」として評価できるのがトップ校
たとえば、ハーバード大学はこれまで、ドーン・ロギンスさん(2012年)や、リズ・マレーさん(2000年)など、家庭の事情で住む家がないけれども優秀な「ホームレス高校生」を合格させています。それはなぜでしょうか?
理由は簡単で、彼らの「期待する学生像」に合致するからです。つまり彼女たちは、「入学してからますます頑張り、周囲にいい影響を与え、将来の成功によって大学の評価を高めてくれそうな人物」だということです。
付け加えるなら、ハーバードなどの伝統校は、その伝統を絶えることなく継承するために、より「濃い履歴」を持った学生を入学させたほうがよいということを経験から知っているのです。
このように、貧困を通じて成熟を勝ち取ったような「経験」も評価するのがアメリカのトップ校です。
逆に「総合型選抜にして経験を問うようになると、お金で経験を買える富裕層が有利で、貧困層にはチャンスがなくなる」ということで「体験格差」などと言われている日本とは、視点が大きく違うとも言えるのではないでしょうか。
プレゼン、家事、お金など、どんな体験が重視されるか?
アメリカでは、幼稚園のころから人前で話す訓練「ショウ・アンド・テル」を行い、小さなうちから発表や質疑応答に慣れさせます。
また、家事を分担させるのも、単なる労働の分担ではなく、大学進学や一人暮らしを早い段階で見据えて「生活力」を身につけることに重きを置くのです。お小遣いの与え方も工夫し、「予算管理」をさせることを通じて金銭感覚を養っています。
またスポーツやアート活動は、単なる「習い事」ではなく、リーダーシップや協調性、表現力を身につける機会として重視されます。
さらに思春期教育においては、子どもを過度に管理するのではなく、「あえて失敗を経験させること」「年齢の枠に閉じ込めず早熟な成長を支えること」そして何より「見守り続けること」が大切だと著者は説きます。
「ダディズ・ガール(お父さんっ娘)」と呼ばれる、良好な関係の父・娘が多いのも、「静かに見守る」と「父親の好きなことを娘に教えて一緒に行動する」という2つのバランスをうまく取って、娘といい関係を築いているお父さんが多いことを著者は指摘しています。
スマートフォンやSNSとの向き合い方、家族旅行や学校行事の意味、メンタルヘルスへの配慮など、現代の親が直面するテーマについても触れており、実践的なヒントとしても役立つ一冊です。
