パンは「買うもの」だと思っていた元営業ウーマンの吉永麻衣子さん。お母様に誘われたパン教室体験会での感動をきっかけに、約200名の講師を育てるパン料理家へと転身しました。「工程をそぎ落とした」手法で業界の常識を覆し、今や全国の幼稚園・保育園に簡単なパン作りで「驚き」と「感動」を届けています。クックパッドのポッドキャスト番組「ぼくらはみんな食べている」で、パンとの出会いを語ってくれました。
「パンは買うものだと思ってた」母と行った体験会が人生の転機に
小学校から大学まで一貫校に通い、卒業後は人材系ベンチャーに就職したという吉永さん。当時、パン作りとは縁もゆかりもない生活でした。
転機は、当時交際していた彼のアメリカ赴任。「東京にいる理由がなくなった」と関西の実家へ戻った時、お母様が新聞の折り込みチラシで見つけたのがパン教室の体験会でした。「こういうの行ったことないから、お母さん一緒に行こうよ」と連れ立って参加したのが、すべての始まりに。
体験会で焼いたのは、くるみパン。自分のような「こじんまりした、ちょっと日に焼けたパン」が自分の手から生まれた瞬間、吉永さんは思いがけない感動を覚えたといいます。
「それが、すごく美味しくて感動したんですね。それに見た目の変化も面白くて。焼き立ての美味しさにも感動したんです」
その後、複数のパン教室や料理教室、お菓子教室など渡り歩く中で、「なぜパンにここまでハマるのか」を自分なりに言語化する瞬間が訪れます。
それは和菓子教室で、わらびもちを作る回のこと。材料欄に「わらびもち粉」とあるのを見て違和感を覚えたと話します。わらびもちは、わらびもち粉からしか作れない。でもパンは違います。
「パンは小麦と酵母と塩とお水があれば、食パンにもなるし、バゲットにもなります。その多様性の幅がとにかく面白かったんです」
最小限の材料から無限の種類が生まれる。その奥深さこそが、吉永さんをパンへと向かわせる根っこにあったのです。
「不要な工程は全部そぎ落とした」常識を覆した「邪道」なパン作り
複数のパン教室で学ぶうちに、「先生を育てる教室」の存在を知った吉永さんは、自身もパン教室を開くことを決意しました。豊洲のマンションで「クッキングスタジオminna」をスタートさせたのは2009年(28歳)のこと。準備段階からブログで発信を行い、開講時には数名の生徒が集まったそうです。
そんな吉永さんの名前を広く世間へ知らしめたのは、2冊目の著書『前の日5分→朝10分で焼きたて! 簡単もちもちスティックパン』の存在です。当時のパン作りといえば、1次発酵・ベンチタイム・2次発酵とすべての工程を丁寧に踏むのが常識。でも吉永さんは、正面からその工程を崩しにいきました。
「このスティックパンは、ある意味、邪道。たくさんある工程のうち、いらないところを全部そぎ落とした、簡単なパン作りだったのです」
冷蔵発酵(夜にこねて冷蔵庫に入れておけば翌朝焼ける)とトースター焼きという組み合わせは、「こんな方法があるのか」と全国のパンの先生たちを驚かせることに。「このレシピを自分の教室でも使っていいですか」という問い合わせが殺到し、のちに約6000人が取得する、レシピ資格制度誕生にも繋がりました。

