クッシング症候群は、男女ともに発症する可能性がある病気ですが、実際には女性に多いとされています。
「顔つきが変わってきた」「体型の変化が気になる」などの見た目の変化に加え、生理不順や気分の落ち込みなど、女性ならではの悩みとして現れることも少なくありません。加齢や生活習慣の影響と考えられやすく、見過ごされてしまうケースもあります。
また、クッシング症候群ではホルモンの影響により、糖尿病や脂質異常症といった代謝疾患を合併することがあります。さらに、高血圧を伴うことも多く、動脈硬化や心血管疾患のリスクが高まる点にも注意が必要です。
本記事では、クッシング症候群が女性に多い理由や、女性に現れやすい症状、見逃しやすいサイン、受診の目安などを解説します。

監修医師:
上田 莉子(医師)
関西医科大学卒業。滋賀医科大学医学部付属病院研修医修了。滋賀医科大学医学部付属病院糖尿病内分泌内科専修医、 京都岡本記念病院糖尿病内分泌内科医員、関西医科大学付属病院糖尿病科病院助教などを経て現職。日本糖尿病学会専門医、 日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本医師会認定産業医、日本専門医機構認定内分泌代謝・糖尿病内科領域 専門研修指導医、内科臨床研修指導医
クッシング症候群が女性に多い理由

クッシング症候群の患者数に男女差はありますか?
クッシング症候群は、男女どちらにも発症する可能性がありますが、統計的には女性に多いとされています。男女比はおよそ1:4です。また、診断される患者さんの平均年齢は40歳代半ばとされています。また、初期にははっきりとした症状が出にくく、体重増加や疲れやすさなどの一般的な不調としてとらえられることも少なくありません。そのため、発見までに時間がかかるケースもあると考えられています。
クッシング症候群が女性に多い理由を教えてください
クッシング症候群が女性に多い理由はわかっていません。ただし、原因の1つである下垂体腫瘍(クッシング病)は女性に多く、全体として女性患者さんの割合が高くなる要因の一つと考えられています。また、ホルモンバランスの変化や内分泌系の影響が関与している可能性も指摘されていますが、詳しいメカニズムはわかっていません。
参照:『クッシング症候群』(石戸谷 滋人 , 海法 康裕, 荒井 陽一 東北大学医学部泌尿器科 仙台市立病院泌尿器科)
クッシング症候群で女性に特に現れやすい症状

クッシング症候群の主な症状を教えてください
クッシング症候群では、コルチゾールの過剰分泌により、特徴的な外見の変化と全身症状が現れます。多くは自覚症状がないまま進行する合併症として、高血圧や糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症、電解質異常、眼の疾患、消化管潰瘍、血栓症などが挙げられます。免疫機能の低下により感染症にかかりやすくなり、重症化するリスクもあります。
代表的な外見の変化は、顔が丸くふくらむ満月様顔貌や、手足は細いままお腹まわりに脂肪がつく中心性肥満、首や肩まわりに脂肪がつくことなどです。
さらに、皮膚が薄くなって傷つきやすくなり、軽い刺激でもあざができやすくなるほか、腹部や太ももに赤紫色の線が現れることもあります。
また、筋肉量の低下により手足が細くなり、立ち上がりや階段の昇り降りがつらくなるなど、日常動作に影響が出ることもあります。加えて、にきびや体毛の増加などの見た目の変化に加え、不眠や気分の落ち込みなど精神面の不調が現れることも特徴です。
なお、コルチゾールが過剰であっても外見の変化が目立たない場合は、サブクリニカルクッシング症候群と呼ばれます。
クッシング症候群には女性特有の症状がありますか?
女性では、ホルモンバランスの影響により、生理不順や無月経などの月経異常が現れることがあります。また、体毛が濃くなる、にきびが増えるなどの変化もみられることがあり、見た目の変化に対する悩みにつながるケースも少なくありません。
これらはコルチゾールの過剰によって性ホルモンのバランスが乱れることが関与していると考えられています。
クッシング症候群は生理や妊娠に影響がありますか?
クッシング症候群では、ホルモンバランスの乱れにより排卵がうまく起こらなくなり、生理不順や無月経が生じることがあります。結果、妊娠しにくくなる可能性があります。
また、妊娠中にクッシング症候群がある場合は、母体や胎児への影響が懸念されるため、慎重な管理が必要です。
クッシング症候群による骨粗鬆症は女性の方がリスクが高いですか?
クッシング症候群では、コルチゾールの過剰によって骨の代謝バランスが崩れ、骨粗鬆症が起こりやすくなります。骨は通常、骨を作る働きと壊す働きのバランスによって維持されていますが、このバランスが崩れることで骨量が減少し、骨折しやすい状態となります。
特に女性は、加齢や閉経によって女性ホルモンであるエストロゲンが減少すると骨密度が低下しやすくなるため、クッシング症候群による影響が重なることで、より骨粗鬆症のリスクが高くなると考えられます。
参照:
『クッシング症候群』(国立国際医療センター)
『骨粗鬆症』(厚生労働省)

