限界を超えた瞬間
「もう……無理」
「え? 真央、何か言った?」
「無理なの!!」
私は叫んでいました。 自分でも驚くほどの大きな声。双子がビクッとして泣き止み、私を見上げます。 その瞳に映る私は、きっと鬼のような形相をしていたでしょう。
私は、命より大切なはずの子どもたちを、今は正視することができませんでした。
「愛情を注がなきゃ」「笑顔でいなきゃ」 そう思えば思うほど、体が鉛のように重くなり、一歩も動けなくなる。 世の中のお母さんたちは、どうして普通に笑っているの? どうして私は、こんなに簡単なこともできないの?
私は上着だけをひったくるように持ち、玄関へ向かいました。
「ちょっと、真央!? どこ行くんだよ!」
智裕の声が響きます。 その時、足元でりくが私のズボンの裾をギュッと掴みました。 「ママ……っ、あーっ!」 不安そうな、必死な顔。
でも、今の私にはその小さな手が、自分を底なし沼へ引きずり込む鎖のように感じてしまったのです。
「離して……!」
私は息子の小さな手を、振り払ってしまいました。 背後で、二人の泣き声が爆発したのを聞きながら、私はドアを蹴り開けるようにして外へ飛び出しました。
あとがき:母性という神話が、牙を剥くとき
最愛の子の手を振り払う。その一瞬の行為に、どれほどの絶望が詰まっているでしょうか。決して子どもが嫌いなわけではない。ただ、「命の責任」を一人で負わされる重みに耐えきれなかっただけなのです。鬼のような形相になってしまった自分に一番傷ついているのは、真央自身。読者の皆様の中にも、ここまでではなくとも「消えてしまいたい」と夜に泣いた経験がある方がいるかもしれません。その痛みから目を背けずに描きました。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: ゆずプー
(配信元: ママリ)

