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「高市早苗を逮捕しろ」SNS拡散、現職首相は逮捕できるのか? 憲法75条「不訴追特権」を専門家が解説

「高市早苗を逮捕しろ」SNS拡散、現職首相は逮捕できるのか? 憲法75条「不訴追特権」を専門家が解説

高市首相を逮捕しろ──。

『週刊文春』による一連の報道を受け、SNS上でそんな声が広がっている。

戦後、現職首相が逮捕された例はない。ただ、1976年のロッキード事件では、首相退任から約2年後に、田中角栄元首相が受託収賄などの容疑で逮捕されている。

そもそも現職の首相は逮捕できるのか。複数の憲法訴訟を担当した経験を持つ平裕介弁護士(帝京大学法学部准教授)に聞いた。

●「訴追されない」は逮捕まで含むのか

──憲法75条は「国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない」と定めています。この「訴追」とは具体的に何を指すのでしょうか。逮捕や勾留も含まれるのでしょうか。

憲法75条は、検察組織による不当な影響から内閣を保護するため、大臣在任中の不訴追特権を認めたものと理解されています。

実務では、同条の「訴追」という文言を重視し、「訴追」とは起訴、すなわち刑事訴訟法上の公訴提起のことを意味すると解されています。逮捕や勾留などの身柄拘束までは含まないという考え方です。

実際、東京高裁は、芦田内閣時代のいわゆる「昭和電工事件」において、「訴追」には「逮捕、勾引、勾留のような身体の拘束の意味を含むものとは、解し得ない」と判断しています(東京高判昭和34年12月26日判例時報213号46頁)。この判断は上告審でも維持されました(最判昭和37年11月30日判例時報321号13頁)。

また、国会の会議録でも、これと同趣旨の政府答弁を確認することができます(昭和51年7月21日・第77回国会 参議院 ロッキード問題に関する調査特別委員会会議録 閉会後第16号18頁〔三木武夫〕)。

もっとも、「訴追」には逮捕なども含まれると解する有力な学説もあります。

しかし、不逮捕特権を定める憲法50条が明確に「逮捕」という文言を用いているのに対して、憲法75条はあえて「訴追」と規定しています。

こうしたことなどから、現在の実務の運用でも、「訴追」に逮捕などの身柄拘束は含まれないとの見解が採られることになるでしょう。

つまり、憲法75条は、大臣在任中の不訴追特権を認めるものであって、不逮捕特権まで認めたものではない、ということになります。

ただし、国会議員には、法律で定める場合を除き、国会会期中は逮捕されないという不逮捕特権があります(憲法50条)。内閣総理大臣は国会議員の中から選ばれますので(憲法67条1項)、少なくとも「会期中」は憲法50条による保護を受けることになります。

●憲法75条が求める「内閣総理大臣の同意」

──首相自身も国務大臣の一人ですが、憲法75条は首相本人にも適用されるのでしょうか。その場合、「内閣総理大臣の同意」が必要という規定はどのように解釈されるのでしょうか。

憲法上の「国務大臣」という語は、条文によって意味が異なります。

たとえば、憲法7条5号や68条では内閣総理大臣以外の閣僚(内閣構成員)のことを指しますが、憲法99条では首相を含む閣僚全体を意味します。

では、憲法75条の「国務大臣」に首相は含まれるのかどうかというと、この点については学説が分かれており、首相も含まれるとする積極説と、含まないとする消極説があります。

これまで首相自身に不訴追特権が問題となった実例はありませんが、政府は日本国憲法審議の際に同条について積極説の立場に立っています。

積極説によれば、首相自身が自らの訴追について同意するかどうかを判断することになります。

一見すると不自然にも思えますが、国務大臣に不訴追特権を認める以上、首相にも同じ保護を認めるほうが素直だとする考え方があります。また、正当な理由なく不同意の意思を示せば、政治責任を問われることになります。

こうしたことなどから、現在では積極説が有力とされ、また、この立場を多数説と整理する見解もあります。

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