家に帰ると、夫が必死に子どもをあやしていた
「帰らなきゃ」
私は立ち上がりました。 逃げ出した自分への嫌悪感で吐き気がしましたが、それでも戻るしかありません。 私がいなければ、あの家は回らない。 そして何より、私はまだ、あの二人の母親でいたい。
家への道が、行きよりもずっと長く感じられました。 マンションのエントランスを抜け、エレベーターに乗り、震える手で鍵を開けます。 ドアを開けた瞬間、聞こえてきたのは……静寂ではなく、智裕の必死な声でした。
「よしよし、大丈夫だよ、そら。ママ、すぐ戻ってくるからね。ごめんな、パパが何も分かってなくて。怖かったよな、りく」
玄関まで駆け寄ってきた智裕の顔は、涙と鼻水でぐちゃぐちゃでした。 彼は両腕に一人ずつ子どもを抱き、不格好に揺れていました。
「……真央」
智裕が私を見て、今にも崩れ落ちそうな顔をしました。
「ごめん。本当に、ごめん……。俺、真央が壊れるまで、何もしなかった。最低だった」
あとがき:冷たい風が教えてくれた、本当の「家族」
外の冷気で頭を冷やした真央が、恐怖と罪悪感に震えながらドアを開けるシーンは、本作の転換点です。そして、智裕の涙。彼がようやく「指示待ち」を辞め、パニックを共有したことで、二人の関係は初めて対等な地平に立ちました。母親を「神様」のように全能だと思い込んでいた夫が、一人の弱い人間として妻を見つめ直した瞬間。絶望の底で、ようやく家族の再生に向けた一筋の光が見えてきます。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: ゆずプー
(配信元: ママリ)

