夫が主導して実家の助けを借り、仕事の調整も行ったことで、真央は一息つく。二人は「指示」ではなく「共有」するパートナーへと変化。保育園も始まり、不格好ながらも共に歩む新しい家族の日常が幕を開ける。
再び涙が止まらない。その時夫は…?
私は玄関に座り込み、声を上げて泣きました。 智裕は子どもを抱えたまま、私の隣に座り、空いている片手を私の肩に置きました。
「私……あの子の手を、振り払っちゃったの。最低なお母さんだよ」
「違う。真央をそこまで追い詰めたのは、俺だ。ノートも読まず、指示を待つだけで、真央を『一人』にした」
その日は、智裕が初めて、私に指示されることなく動きました。 彼は震える手でスマホを取り出し、実家の母に電話をかけました。
「お義母さん、すみません。真央が限界なんです。明日から一週間、こっちに来てもらえませんか。費用は全部僕が持ちますから」
さらに、彼は会社にも電話を入れました。
「明日から有給休暇をいただきます。家族の緊急事態です」
「智裕……仕事は?」
「仕事より、真央と子どもたちが大事だろ。今まで、そんな当たり前のことも示せなくてごめん」
変わり始めた夫の意識
その夜、私たちは初めて、深い話し合いをしました。
「『やり方教えて』は、もう禁止。分からないなら自分で調べる。失敗してもいいから、俺の責任でやる。真央は『責任者』じゃなくて、一緒に育てる『パートナー』なんだから」
智裕の言葉に、ようやく私の心の棘が少しだけ溶けました。
翌日、遠方から私の母が駆けつけてくれました。 母に子どもを預け、私は1年半ぶりに智裕と二人だけで外へ出ました。
「法的にも、社会的に見ても、俺は家事・育児の義務を放棄してたようなもんだよな」
智裕は苦笑いしながら、私に温かいコーヒーを差し出しました。
「これからは、このノートを俺のバイブルにするよ」
彼の手には、かつて私が作り、無視されていた『ルーチンノート』が握られていました。

