糖尿病は、血液中のブドウ糖が過剰になりやすい病気です。その影響は全身の血管や神経だけでなく、皮膚にも現れることがあります。高血糖が続くと、感染への抵抗力が落ちたり、自律神経障害によって皮膚が乾燥しやすくなったりします。その結果、かゆみや湿疹、真菌感染症などの皮膚トラブルが起こりやすくなります。
この記事では、糖尿病によってかゆみが生じるメカニズムや、かゆみが出やすい部位の特徴、日常生活でできるセルフケア、病院での治療について解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医・指導医、日本緩和医療学会認定登録医、禁煙サポーター
糖尿病によるかゆみの特徴

糖尿病によるかゆみの特徴を教えてください
糖尿病によるかゆみは、単なる乾燥によるかゆみだけでなく、感染症や神経障害、腎機能の低下などが関わって起こることがあります。全身がなんとなくかゆい場合もあれば、外陰部や足、体幹、手足など、特定の部位に強く出る場合もあります。皮膚が乾燥してカサつく、赤みや湿疹を伴う、ヒリヒリする、同じ場所をくり返しかゆくなる、といった現れ方がみられます。腎機能が低下している場合には、強いかゆみを伴う小さな盛り上がりが皮膚にできることもあります。糖尿病のかゆみは、長引きやすい、くり返しやすい、掻き壊すと悪化しやすい点が特徴です。
かゆみはどのようなタイミングで出やすいですか?
糖尿病によるかゆみは、血糖コントロールが乱れている時期や、血糖値の変動が大きいときに出やすくなることがあります。高血糖の状態が続くと、皮膚のバリア機能が低下し、外からの刺激に敏感になります。そのため、衣類のこすれや汗、乾燥などでもかゆみを感じやすくなります。入浴後に身体が温まったときや、就寝前にリラックスしている時間帯に、乾燥によるかゆみが強くなることもあります。感染症が原因の場合は、血糖値が高い状態で菌が増えやすくなり、炎症やかゆみが目立ってくることがあります。
糖尿病でかゆみが出やすい部位を教えてください
糖尿病でかゆみが出やすい部位のひとつが外陰部です。尿に糖が出る状態では、真菌が増えやすく、女性は外陰部のかゆみや性器カンジダ症として現れることがあります。強いかゆみだけでなく、赤み、ヒリヒリ感、おりものの変化を伴う場合もあります。足もかゆみが出やすい部位です。糖尿病は、足の皮膚が乾燥しやすく、白癬、いわゆる水虫などの感染症も起こりやすくなります。特に足の指の間や足裏に、かゆみ、皮むけ、赤み、ただれがみられることがあります。
糖尿病によるかゆみと乾燥肌や蕁麻疹などによるかゆみは異なりますか?
糖尿病によるかゆみは、見た目だけでは乾燥肌や蕁麻疹と区別しにくいことがあります。ただし、乾燥肌が主に皮膚のカサつきによって起こるのに対し、糖尿病は血糖の乱れによって皮膚の防御機能が低下し、かゆみが長引きやすくなります。小さな傷から感染につながることもあるため、掻き壊しによる悪化にも気を付ける必要があります。蕁麻疹は、赤く盛り上がった発疹が急に出て、時間とともに場所を変えたり消えたりすることが特徴です。一方、糖尿病に伴うかゆみでは、外陰部や足などに同じ症状をくり返す、赤みやただれ、皮むけを伴うなど、部位や経過に特徴が出ることがあります。
糖尿病によるかゆみの原因とメカニズム

なぜ糖尿病になるとかゆみが生じるのですか?
糖尿病でかゆみが生じる背景には、免疫機能の低下や皮膚のバリア機能の乱れがあります。高血糖の状態では、細菌やカビに対する抵抗力が弱まり、カンジダや白癬などの感染症にかかりやすくなります。感染によって炎症が起こると、赤みやただれとともにかゆみが出ます。また、糖尿病に伴う代謝の変化は、皮膚のコラーゲンや血流、傷の治り方にも影響します。そのため、乾燥や小さな傷が治りにくくなり、皮膚トラブルが長引きやすくなります。さらに、糖尿病性腎症が進行して腎機能が低下すると、老廃物の蓄積などが関係して、全身のかゆみが出ることがあります。
糖尿病でかゆみを感じるメカニズムを教えてください
糖尿病でかゆみを感じるメカニズムには、末梢神経障害が関わっています。高血糖が続くと、自律神経が障害され、皮膚の潤いを保つための発汗が減りやすくなります。乾燥した皮膚はバリア機能が低下し、わずかな刺激でも神経が反応してかゆみとして感じやすくなります。さらに、感覚神経そのものが障害されると、外からの刺激がないにもかかわらず、しびれ、痛み、ムズムズ感、かゆみのような異常感覚として感じることがあります。高血糖によって生じる糖化の影響や皮膚組織の変化も、炎症を起こしやすい状態に関わると考えられています。

