離婚と年金分割
離婚は個人の人生に多大な影響を及ぼすだけでなく、経済的な側面、特に年金受給にも影響を及ぼします。
今後どのような暮らしを選んでいくとしても、お金の仕組みをあらかじめ知っておくことは、心にゆとりをもたらしてくれます。
離婚に伴うお金の不安やリスクを和らげるために、年金分割制度は重要なツールとなるでしょう。 どのような状況でも慌てずに済むように、基本的な仕組みを分かりやすく整理していきます。
年金制度と年金分割
年金は一般的に、勤労者が退職後の生活を補償するための社会保障制度です。
日本の年金制度は、国民全体を対象とした国民年金と会社員や公務員などの労働者を対象とした厚生年金から成り立っています。
年金分割制度はこの年金制度の一部で、離婚した場合に婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割し、自分の年金とすることができる制度です。
具体的には、離婚時の年金分割が行われた場合、厚生年金支給額を計算する際の基礎となる報酬額(標準報酬)の記録が結婚していた期間にわたって分割され、年金額を2人で分割することが可能になります。
これにより、経済的なリスクが軽減され、離婚後の生活を維持する手段となります。
年金分割できるケース・できないケース
年金分割は基本的に全ての離婚ケースで可能ですが、手続きの期限があるため注意が必要です。
年金分割の手続きは、原則として離婚をした日の翌日から5年を経過すると、請求できなくなります。
ただし、これは令和8年(2026年)4月1日以降に離婚等をしたケースに適用される最新の法律です。
もし令和8年(2026年)3月31日以前に離婚等をしている場合は、従来どおり「2年以内」のまま期限が切れてしまいますので、ご自身の離婚日を必ず確認してください。
また、既に離婚等が成立し、相手方が死亡した日から起算して1カ月を経過すると請求できなくなるので注意してください。
なお、この1カ月という期限よりも、上記の「5年(または2年)」の期限のほうが先に到来する場合は、その時点までとなります。
年金分割の種類
年金分割の方法は主に2種類あります。 1つ目は「合意分割」で、これは2人からの請求により年金を分割する方法です。
分割の割合は2人の合意、または、裁判手続によって決まった割合となります。
合意分割では、婚姻期間中の相手方の厚生年金加入期間を自身の厚生年金加入期間と同等とみなし、その期間中の「標準報酬月額・標準賞与額」の合計額の半分を相手方から分割して受け取る手続きを行います。
この合意分割の割合は、半分の範囲内で夫婦間の協議により変更が可能です。
つまり、経済的な状況や育児などの家事労働への貢献度などを考慮に入れ、夫婦間で話し合いを行い分割割合を決定します。
ただし、このプロセスは双方の合意が前提であり、合意が得られない場合には家庭裁判所に申し立てて裁判所に分割割合を決定してもらうことが可能です。
たとえば、夫婦共働きで夫が婚姻期間中平均で月額30万円、妻が同20万円だった場合、最大で夫から5万円を分割し夫妻それぞれが25万円を受け取ることになります。
これにより、夫婦間の経済的なバランスを維持しつつ年金を受け取ることが可能となります。
2つ目は「3号分割」で、これはサラリーマンの妻である専業主婦の方など、国民年金第3号被保険者であった方からの請求により年金を分割する方法です。
分割の割合は、2分の1ずつとなります。3号分割であれば、相手の合意や話し合いがなくても、自分ひとりで年金事務所に行って手続きをするだけで半分に分割できます。
年金分割を受けられないシチュエーション
年金分割制度は一定のケースで活用できますが、全ての状況において適用可能なわけではありません。
自営業者や個人事業主との離婚時、年収の大幅な違いがある場合、または手続き期限を過ぎてしまった場合など、年金分割を受けられない特定のシチュエーションが存在します。
自営業者や個人事業主との離婚時の年金分割
自営業者や個人事業主の場合、厚生年金に加入していない可能性が高く、その場合、年金分割制度の適用は難しくなります。
これらの職業に就いている人は通常、国民年金にしか加入していないため、婚姻期間中に納めた保険料に対応する年金を分割することができません。
そのため、自営業者や個人事業主と離婚する場合、その他の財産分割や慰謝料などを通じて経済的な補償を求めることが一般的です。
年収の違いと年金分割
年収の大幅な違いがある場合、年金分割の結果が公平でないと感じるかもしれません。
年金分割は婚姻期間中に納付された厚生年金の保険料に基づいて行われるため、一方が高収入であればあるほど、その人から分割される年金額も大きくなります。
年金分割を行ううえでは、すでに説明した合意分割と3号分割という分割方法がありますが、年収の違いが大きい場合、3号分割であると分割額がまとまらないケースがあります。
年収が大きい方に不利に働いてしまうからです。
したがって、合意分割がとられ実際の分割額は双方の合意によることになります。
円満な離婚であれば、合意の上で年収が低い方についても十分な年金額が確保できる可能性が高くなりますが、そうでない場合には年金額が十分に確保できない可能性があります。
手続き期限が過ぎた場合の年金分割
年金分割には、手続き期限が設けられています。 離婚後、2年以内(2026年4月1日以降の離婚であれば原則5年)に年金分割の手続きをしなければ、分割を請求する権利が失われてしまいます。
この期限は厳格に守られるため、過ぎてしまった場合はどんなに合理的な理由があっても年金分割を行うことはできません。
そのため、離婚後は速やかに手続きを進めることが重要となります。
また、この期限は相手方が亡くなった場合でも適用され、その場合は死亡した日から1カ月以内に手続きを完了させる必要があります。
なお、期限(5年または2年)が迫っているのに夫婦間の話し合いや調停が長引いている場合は、期限が切れる前に家庭裁判所へ調停・審判の申し立てを済ませておきましょう。
そうすれば、本来の期限を過ぎてしまっても、調停成立や審判確定の翌日から「6カ月以内」であれば手続きができるという救済特例があります。

