まち合わせ場所に現れた紀子を見て、博嗣は凍りつく。紀子は彼に不貞の証拠を突きつけ、二度と裏切らないことを誓わせる。優菜にかくしとおす代わりに、紀子は彼を一生監視しつづけるという「呪い」をかけた。
ついに相手と直接対決のとき
土曜日の午後。 指定されたカフェの奥の席で、私は彼をまった。
帽子をふかくかぶり、メガネをかけて…なるべく「紀子」だとバレないように。
やがて、見なれた姿が店に入ってきた。
博嗣さんだ。
彼は少しソワソワしながら、あたりを見わたしている。
「こちらです!」 私が手をあげ、声をかけると、彼はうれしそうに近寄ってきた。
「はじめまして〜!”きーちゃん”さんですか〜?」
満面の笑みで私の向かいに座る博嗣さん。 その笑顔が、あまりに軽薄で吐き気がした。
「博嗣さん。おひさしぶりですね」
私がゆっくりと帽子を取り、メガネを外すと、彼の顔から血の気が引いていくのがわかった。
見苦しい親友の夫
「え…き、紀子ちゃん!? なんで……」
「なんで、って…あなたが私に"いいね"をおくってきたからですよ。博嗣さん、今どんなお気持ちですか?」
博嗣さんはガタガタとふるえはじめ、周囲をキョロキョロと見わたした。
「ち、ちがうんだ。これは、その…ただのヒマつぶしというか、ゲーム感覚で…」
「ゲーム? へえ…優菜が家でつわりにくるしんでいる時に…ゲーム感覚で他の女性をあさっていたんですか? 彼女、言ってましたよ。"博嗣さんは仕事でおそいけど、帰ってきたらやさしい"って。そのやさしさのウラで、こんな汚いことをしていたんですか?」
私の声は、自分でもおどろくほど冷徹だった。
「優菜には何も言っていません。もし、今ショックを受けたら…おなかの子に何かあるかもしれない。そう思って、私はだまっていました。あなたをゆるしたからじゃありません」
「……本当に、最低なことをした」
「わかっているなら、今すぐこの場でアプリを消してください。それから、二度とこんなマネはしないと誓ってください。もし、次にログインしているのを私が見つけたら…すべての証拠を優菜におくります。あなたの両親にも、優菜のご両親にもね」

