奈々の生活は、マサからのLINE中心へと一変する。返信一つに一喜一憂し、情緒不安定になる彼女。「子どもも一緒にしあわせにする」というマサの非現実的な言葉を盲信し、今のしあわせを「代わり映えのない退屈」と切り捨てる。
すっかり相手に夢中に…
奈々からの相談をうけてから一週間。私たちのLINEのやり取りは、マサさんの話ばかりになっていった。
「マサさん、昨日は仕事がいそがしかったみたいで、返信が夜中だったんだ。私も起きて待ってたんだけど、寝おちしちゃって…」
「今日もストーリーは見てるのに、LINEの返信がないの。何か気にさわること言っちゃったかな?」
おくられてくるメッセージからは、奈々の精神状態が不安定なのが手に取るようにわかる。
かつての彼女は、「仕事とプライベートは別物!」と、はっきりわり切るタイプだった。
仕事や家事の合間にスマホをチェックし、返信がおそくても「いそがしいんだろうな」とわらいとばせる強さがあったはずだ。
すっかり変わってしまったおさななじみ
しかし、今の奈々は、通知がなるたびに一喜一憂し、既読がつかないことにおびえている。
その姿は、まるで強力な薬にでも依存してしまったかのようだった。
ある日の夕方、公園で子どもをあそばせながら、私は奈々に核心を突く質問をした。
「奈々…マサさんって一日の連絡はどれくらいなの?」
「うーん…お昼に一通と、夜の仕事がおわった後に数通かな。マサさん、プライドが高いところがあるから…自分からはあんまり連絡しないんだけど、たまに甘くなるんだよ。"早く迎えに行きたい"とか」
私はため息をのみこんだ。
「それにくらべて…主人は私のこと、ただの家政婦か母親としか見てない気がするの」
奈々の不満もわからなくはない。結婚生活がながくなれば、愛情表現がへるのはよくある話。でも、それとこれとは話が別だ。
「…迎えに行くって…具体的にどうするつもりなの? 奈々には、今の生活があるんだよ。ご主人と離婚して、マサさんと再婚するつもり?」
「それは…すぐにはムリだけど。でも、マサさんは"子どもの父親になる覚悟はある"って言ってくれてるし」

