夫婦で話し合うチャンスを棒に振ってしまった日
インターホンが鳴ったのは、日が落ちた夕方のことだった。
「……誰だろう」
悠斗とリビングで過ごしていた私は、何気なく立ち上がる。
けれど、モニターを見た瞬間、体が固まった。
そこに映っていたのは、恒一だった。
「……え……」
心臓が、ドクンと大きく鳴る。
数日ぶりに見る夫の姿。
変わらないはずなのに、どこか遠く感じてしまう。
インターホンが、もう一度鳴る。
指先が、震えていた。
ドアの前まで行く。
でも、鍵に手をかけたまま、動けない。
「このままだと、手を出してしまうかもしれない」
あのメッセージの言葉が、頭の中でよみがえる。
(……開けて、大丈夫なの?)
自分でもわからなかった。
会いたい気持ちはある。話もしたい。
でも同時に、怖いと思ってしまっている自分がいる。
こんなふうに思ってしまうこと自体が、ひどく悲しかった。
しばらくすると、インターホンは鳴らなくなった。
そっとモニターを見ると、恒一はもうそこにはいなかった。
私は、その場にへたり込んだ。
(……私、何やってるの……)
会えたはずなのに。
話せたかもしれないのに。
私は自ら、その機会を手放してしまった。
「手を出してしまうかも」と告げられたら、誰だってこわくなってしまうもの。安易に玄関のドアを開けることができなかったのは、当然です。
引っ越しと、日々の家事・育児、そして仕事の疲労が積み重なり、お互いイライラした日々を過ごしていました。ささいなことでも、積み重なるといつか爆発してしまうものです。
夫婦として、家族として長く一緒に過ごしていると、遠慮がなくなるもの。つい、キツイ言葉をぶつけてしまうことも。ですが、いちばん近くにいる相手だからこそ、大切にしなければいけませんね。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: ももこ
(配信元: ママリ)

