夜間に何度もトイレに起きる、日中もトイレが近いといった症状は、年齢のせいと考えて見過ごされがちです。しかし、背景には治療が可能な病気が隠れている場合もあります。本記事では、夜間頻尿の原因や治療の進め方などについて、よつかいどう泌尿器科クリニックの矢野仁先生(日本泌尿器科学会専門医・指導医)に話を聞きました。
※2026年4月取材。

監修医師:
矢野 仁(よつかいどう泌尿器科クリニック)
富山大学医学部医学科卒業。その後、千葉大学医学部附属病院、沼津市立病院、東邦大学医療センター佐倉病院などで泌尿器科医として経験を重ね、2022年に千葉県四街道市で「よつかいどう泌尿器科クリニック」を開院、院長となる。医学博士。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本排尿機能学会排尿機能専門医、日本泌尿器内視鏡学会泌尿器腹腔鏡技術認定医。
トイレの回数が多い原因
編集部
トイレの回数が多くなった気がします。
矢野先生
尿の回数が多い主な原因には、前立腺肥大症、過活動膀胱(かかつどうぼうこう/OAB)、神経因性膀胱などが挙げられます。すべて排尿のコントロールに関わる病気であり、原因に応じて対応が異なります。まずは、自分がどの疾患に当てはまるのか見極めが重要です。
編集部
前立腺肥大症とはどのような病気ですか?
矢野先生
前立腺が大きくなり、隣接する膀胱を押し上げたり、前立腺内の尿道を圧迫したりする影響で尿が近くなる、または尿が出しづらくなる病気です。加齢が主な原因とされています。尿の勢いが弱い、排尿後も尿が残った感じがする、何度もトイレに行きたくなるといった症状がみられます。進行すると日常生活に支障をきたし、場合によっては自身で排尿ができなくなる“尿閉”を発症するケースもあります。
編集部
では、過活動膀胱とはどのような状態ですか?
矢野先生
膀胱が過敏になり、尿が十分にたまっていなくても尿意を感じたり、膀胱が収縮してしまったりする状態のことです。突然強い尿意を感じる「尿意切迫感」を主症状とし、多くの場合、昼間頻尿や夜間頻尿を伴います。ときには尿失禁症を認める場合もあります。
編集部
神経因性膀胱についても教えてください。
矢野先生
脳や脊髄、末梢神経など神経系の障害により、排尿のコントロールがうまくいかなくなる状態の総称です。尿が出にくくなる場合もあれば、逆に頻尿や尿失禁症を認める場合もあります。原因となる疾患や障害の程度によって症状はさまざまです。
夜間に何度も起きる理由
編集部
最近は、夜間もトイレに起きてしまいます。
矢野先生
夜間、就寝中に1回以上トイレに起きる状態を「夜間頻尿」と呼んでいます。夜間頻尿の主な原因は、膀胱内に尿をためづらくなる状態や、夜間の尿量増加、睡眠が浅くごく軽い尿意でも目が覚める状態などです。複数の要因が重なっているケースも少なくありません。主な原因を見極め、適切な治療が重要です。
編集部
膀胱内に尿をためづらくなる場合の夜間頻尿について教えてください。
矢野先生
前立腺肥大症や過活動膀胱などの影響で、膀胱に十分に尿をためられない状態では、夜間でもトイレの回数が増えます。夜に限らず昼間の頻尿もあわせてみられる場合が多く、前立腺や膀胱に対する治療が必要です。
編集部
夜間の尿量が増える場合の夜間多尿についても教えてください。
矢野先生
夜間に作られる尿の量が増える状態である夜間多尿は、加齢によるホルモンバランスの変化や水分・塩分摂取のタイミング、高血圧や心不全、睡眠時無呼吸症候群などの疾患が関係しています。昼間の排尿回数は少ない反面、夜間だけ回数が増える場合は夜間多尿が疑われます。夜間尿量が1日排尿量の3分の1以上を占める状態を夜間多尿と定義します。夜間頻尿の約80%に夜間多尿がみられるという報告もあります。

