英国の北東部の山岳地帯で暮らす野生ヤギが、実はヨーロッパでも極めて珍しい遺伝的特徴を持つ集団だったことが分かりました。
研究者らによると、このヤギたちは新石器時代の農耕民が英国へ連れてきた初期のヤギの子孫である可能性が高く、長い年月を経ても他の品種とほとんど交雑していなかったことが判明しました。
英国の野生ヤギ、実は“他にない遺伝子”を持っていた
この発見は、英ニューカッスル大学の研究チームによるもの。研究成果は2026年5月22日付の学術誌『Journal of Heredity』に掲載されました。
研究チームは、英国の北東部ノーサンバーランド州のカレッジ・バレーやチェビオット・ヒルズ周辺に生息する野生のチェビオットヤギを対象に、遺伝的な特徴や祖先とのつながりを調査しました。
その結果、チェビオットヤギは、他のヨーロッパのヤギ品種とは明らかに異なる遺伝的集団であることが判明。世界各地のヤギの遺伝データと比較したところ、最も近いのはアイルランドのヤギでしたが、それでも独自性の高さが際立っていたといいます。
さらに研究では、チェビオットヤギが英国の古い在来系統「ブリティッシュ・プリミティブ・ゴート」の孤立した生き残り集団であり、長期間にわたって他のヤギとほとんど交雑していなかったことも明らかになりました。
研究者らは、この集団が新石器時代に英国へやってきた初期の家畜ヤギの血統を今も色濃く残している可能性が高いとみています。
長年の淘汰で数を減らすも、貴重な遺伝資源として期待
一方、調査では課題も見つかりました。過去に行われた淘汰政策などの影響で個体数が減少した結果、遺伝的多様性が低下し、近親交配が進んでいることが確認されたのです。
研究報告の筆頭著者でニューカッスル大学自然・環境科学部の修士課程学生であるデール・デセナ氏は、英国各地の野生化ヤギは生物多様性の一部でありながら十分に研究されてこなかったと指摘。「チェビオットヤギのような小規模で孤立した集団は、遺伝的多様性の喪失に特に弱い」として、今後の保全戦略に遺伝情報を活用する重要性を訴えました。
共同研究者のリチャード・ベヴァン博士も、「長年議論されてきたチェビオットヤギの起源について、ようやく事実を明らかにできた」とコメント。今後は英国各地に残る他の野生化ヤギについても調査を進める必要があるとしています。
研究チームは、こうした在来系統が病気への抵抗性や遺伝的多様性の確保、さらには気候変動への適応といった面で、将来の農業に役立つ遺伝資源となる可能性があると考えています。

