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旭川女子高生殺害、内田梨瑚被告人「橋から落としていない」殺意否定 殺人罪は認定できる? 弁護士が解説

旭川女子高生殺害、内田梨瑚被告人「橋から落としていない」殺意否定 殺人罪は認定できる? 弁護士が解説

●具体的な考え方の筋道

「一連の行為」を実行行為と主張する場合、その具体的な内容にはいくつかの筋道が考えられますが、ここでは大きく2つ挙げてみます。

1)意思決定の自由を奪った、という考え方

1つめは、被害者の意思決定の自由を完全に奪い、「橋から落下する以外に選択肢がない状態」に追い込んだ行為の流れ全体を実行行為とする考え方です。

たとえば、最高裁平成16年(2004年)1月20日決定は、保険金目的で被害者に岸壁から車ごと飛び込むことを執拗に命令し続けた事案で、被害者を「命令に応じる以外の行為を選択できない精神状態」に追い込んだ一連の行為を殺人の実行行為と認めました。(結果として被害者が生き延びたため殺人未遂罪とされています)

本件では、深夜の監禁・全裸での土下座強要・橋上での暴行・100回以上の「死ね」「落ちろ」という怒号・欄干外側への誘導という一連の経過により、被害者が転落以外の選択肢を事実上失っていたと評価できる余地があります。

このように、被害者を追い詰める行為の流れ全体が実行行為である、という主張が考えられます。

このような主張が認められれば、手で押したことが証明されなくても殺人罪の成立が認められる可能性があります。

2)一連の行為、という考え方

2つめは、核心となる危険な行為(被害者を橋の欄干外側という危険な場所に立たせて落下させる)だけでなく、それに至るまでの暴行・脅迫行為を「殺意が継続する中での一連の行為」として実行行為とする考え方です。

たとえば、東京高裁平成13年(2001年)2月20日判決では、被告人が室内で自身の妻を包丁で数回刺した後、ベランダの手すり伝いに逃げた妻を追いかけ、今度は連れ戻してガス中毒死させようとしたところ、妻をつかもうとしてベランダから転落死させました。

「手すり上の人をつかむ」という行為は通常であれば暴行にとどまります。

それでも裁判所が殺人罪の成立を認めたのは、1)刺突時から「殺す」という意思が継続していたこと、2)つかむ行為は殺害計画の実現に欠かせない行為だったこと、3)刺突行為とつかむ行為が時間的・場所的につながっており、一連の行為とみられること、といった点からと考えられます。

本件であれば、具体的にどの時点から「一連の殺人行為」とするかは難しいところですが、たとえば欄干に着座させ、外側に立たせ、「落ちろ」と怒鳴り続けた行為の時点で殺意が形成され、その後の行為(外側に立たせ続ける・押す)も殺意が継続しているとして、この一連の行為を実行行為であると主張することなどが考えられます。

このような主張が認められれば、やはり手で押したことが証明されなくても殺人罪の成立が認められる可能性があります。

なお、どのような構成を取るかは検察官次第です。

●殺意はどう認定されるか

殺人罪が成立するには、実行行為のほかに「殺意」も必要です。内田被告人は一貫して「殺意はなかった」と主張しています。

「殺意」といっても、「殺してやろう」という気持ちが強くないと認められないわけではありません。

「被害者が死亡してしまうかもしれないが、それでもかまわない」と考えて行為に及んでいた場合であっても、殺意が認められます。

また、被告人が殺意を否認していても、犯行の態様・犯行前後の言動などの間接事実から、被告人が死亡を認識・認容していたかどうか判断し、殺意が認定されることはあります。

本件で殺意を推認しうる間接事実としては、「死ね」「落ちろ」などと100回以上怒鳴り続けたという共犯者証言、全裸で橋の欄干外側に立たせたこと、被告人質問で「泳いで助からないのはわかっていたか」という問いに「はい」と答えたこと、などが挙げられます。

監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

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