離婚が成立し、兄はシングルファザーとして再出発する。1年後、サトルはおちつきを取りもどし、初乃の子どもたちとも仲良くあそべるようになった。「正しい距離」を見つけた兄妹は、たがいを尊重しながらおだやかな日常を歩む。
義姉の末路
離婚調停は、私たちが想像していたよりもスムーズに進んだ。
決め手となったのは、あの録音データだけではなかった。 実は、啓子さんの実家の両親も、娘の異常な性格を以前から危惧しており、「もうこれ以上、英次さんに迷惑はかけられない」と、兄の味方についてくれたのだ。
結果、啓子さんのモラハラと育児放棄や虐待にちかい言動が認められ、親権は兄が持つことになった。
啓子さんには多額の慰謝料と、サトルくんへの養育費の支はらいが命じられた。
彼女は最後まで、
「被害者は私よー! 叱らない育児を理解しない、無教養な連中のせいだわ!」
と、さわいでいたそうだが、法廷で彼女の言葉に耳をかすものはいなかった。
この一年でたくさんの変化があった
それから一年。
「初乃おばちゃんー! こんにちは!」
公園の入り口で、元気に手をふる少年がいた。サトルくんだ。 かつてのワガママでいじわるだった面影は消え、表情にはおちつきがもどっていた。
「サトルくん、こんにちは。夢、サトルくんと一緒にあそんでおいで」
「うん! サトルくん、あっちのブランコ行こう!」
夢も今では、サトルくんを本当のお兄ちゃんのように慕っている。
兄は現在、シングルファザーとして仕事と育児に奮闘している。
「初乃…あの時は本当にありがとう。お前につきはなされなかったら、俺は今でもあの地獄の中にいたと思う」
兄は少し痩せたけれど、とてもいい顔をしている。
スマホゲームに逃げることもなくなり、しっかりと子どもの目を見て話すようになった。
「いいんだよ…私も、兄ちゃんと距離をおこうとしたのは本気だったけど……こうしてわらって会えるようになったのが、いちばんうれしいから」

