ぶじに出産した、優菜。紀子は博嗣の悔い改めた姿を確認し、証拠のデータを「守護の盾」として残すことに。親友を守り抜いた紀子は、自分自身のしあわせを求め、再び一歩を踏み出すのだった。
友人が出産。夫の様子は…?
ついに、優菜が元気な男の子を出産した。
病院のガラス越しに見える赤ちゃんは、博嗣さんにそっくりだ。でも、目元はやさしい優菜の目によくにていた。
「紀子!来てくれてありがとう!」
病室でしあわせそうに微笑む優菜。その横には、赤ん坊をおそるおそる…でも、とても愛おしそうに抱く、博嗣さんの姿があった。
「かわいい…おめでとう、二人とも」
私が声をかけると、博嗣さんと一瞬、目が合った。彼はすぐに視線をそらし、それからふかく、ふかく、私に向かって頭を下げた。
優菜には、「出産を祝ってくれた紀子ちゃんへの感謝」に見えたことだろう。
しかし、私には、それが、あの日の約束を守りつづけているという誓いと、感謝…そして謝罪であることがわかっていた。
きちんと反省した親友の夫
「博嗣さん…パパになったんだから、もっとしっかりしなきゃね」
私が少しいじわるく言うと、彼は真っ直ぐに私を見て答えた。
「…命をかけて、この子と優菜を守ります」
その言葉にウソはないと、彼の目を見て確信した。
人は、おろかなまちがいを犯す生き物だ。
でも、それを悔い改め、大切な人のために生き直すチャンスを、私は彼にあたえた。 それが正しいことだったのかは、数十年後にしか分からないかもしれない。
でも、今のこのおだやかな風景が、何よりの答えだと思いたい。
帰り道、私はスマホを取り出し、あの「証拠」が入ったフォルダをながめた。
(削除しようか…)
一瞬、まよった。
でも、これを消すときは、きっと彼らが銀婚式を迎えるころだろう。
(あるいは、私がこの世を去る時…それまでは、優菜のしあわせを監視し、博嗣さんの誠実さを試す「守護の盾」として、私の手元においておこう)
私はそう固く決意し、スマホをカバンにしまった。

