どうか、目を覚ましてほしい
奈々のひとみがゆれ始めた。「図星を突かれた」そんな表情だ。
「今のご主人は、たしかに言葉は足りないかもしれない。でも、毎日、必死にはたらいて…あなたと子どもを守ってる。それは言葉よりもおもい事実だよ。マサさんの口だけの"愛してる"なんて、1円の価値もない。奈々…あなたは一途なのが長所だけど、今はその一途さを向ける方向を、完全にまちがえてるよ」
「でも……私、大切にされたかったの……」
奈々の目から、大粒の涙がこぼれおちた。
「うん…でも、大切にされるって、あまい言葉をもらうことだけじゃない。あなたの人生を…子どもの未来をこわさないで見守ってくれるのが、本当の愛情じゃないかな。マサさんは、あなたの人生をこわそうとしてる。それに気づかないほど、あなたはバカじゃないでしょ?」
私は彼女の手をつよくにぎった。
「あなたはマサさんのプライドを満たす道具じゃない。一人の母親で、私の大切な親友なんだよ」
奈々は声を上げて泣き始めた。その涙は、マサさんへの恋心からではなく、自分のしでかそうとしたことへの恐怖と後悔からくるものだと、私には確信できた。
あとがき:親友への「愛のムチ」
親友にここまできびしいことを言うのは、並大抵のエネルギーではありません。きらわれることをおそれず、奈々のプライドをあえて傷つけてでも、目を覚まさせようとする静香の言葉は、まさに「愛のムチ」。
マサに愛されていたのではなく、単に彼の「欲求承認を満たす道具」にされていたという事実…。その残酷な真実を突きつけられ、声を上げて泣いた瞬間、彼女の中にあった「恋」という名の「依存」がようやく解けたのだと感じ、安堵する一幕です。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: ゆずプー
(配信元: ママリ)

