知っておきたい公的制度
高血圧の治療費は継続的に発生するため、利用できる公的制度を理解しておくことがとても大切です。
■ 高額療養費制度(こうがくりょうようひせいど)
高額療養費制度とは、同じ月内に医療機関や薬局に支払った医療費の自己負担額が一定の上限(自己負担限度額)を超えた場合に、超えた分が後日払い戻される制度です。「医療費の天井」のようなもので、高額な治療が続いても一定以上の自己負担が発生しない仕組みです。上限額は年齢や所得によって異なり、70歳未満・年収約370万〜770万円の方では月約87,430円が目安となります(医療費総額によって変動します。2025年時点)。高血圧の外来通院のみでは上限に達することはほとんどありませんが、合併症による入院・手術が重なった際に非常に役立ちます。申請窓口は加入している健康保険の窓口(会社員は健康保険組合・協会けんぽ、自営業者は市区町村の国民健康保険担当窓口)です。あらかじめ「限度額適用認定証」を医療機関の窓口に提示することで(マイナ保険証でのオンライン資格確認時は提示不要)、はじめから自己負担限度額までの支払いで済みます。※高額療養費の自己負担限度額は2025年12月に国の見直しが決定され、2026年夏以降、所得に応じて段階的に引き上げられる予定です(具体的な金額は今後確定)。
なお、マイナ保険証を利用してオンライン資格確認を受けると、事前申請なしで自動的に自己負担限度額が適用されるため、高額療養費の事後申請自体が不要になります。
■ 医療費控除(いりょうひこうじょ)
医療費控除とは、1年間(1月〜12月)に支払った医療費の合計が10万円を超えた場合に、確定申告をすることで超えた分の一部が所得税・住民税から差し引かれる制度です。生計を同じにする家族全員の医療費を合算できるため、複数の家族が通院している場合は合計額が10万円を超えやすくなります。通院のための交通費や処方薬の薬代も対象に含まれます。申請窓口は税務署またはe-Tax(確定申告時)です。
■ セルフメディケーション税制(せるふめでぃけーしょんぜいせい)
セルフメディケーション税制とは、健康診断や予防接種など一定の健康維持の取り組みをしている方が、対象の市販薬(スイッチOTC医薬品:病院で処方されていた成分を含む市販薬)を年間12,000円を超えて購入した場合に、超えた分(最大88,000円)を所得から差し引ける特例です。通常の医療費控除との選択適用となるため、どちらが有利かを確認してから申告することをお勧めします。申請窓口は税務署またはe-Tax(確定申告時)です。
放置すると費用はどうなる?合併症と医療費のリスク
高血圧を管理しないまま放置すると、脳卒中(脳梗塞・脳出血)や心筋梗塞、慢性腎臓病などの深刻な合併症を引き起こすリスクが高まります。これらの合併症が発症した場合、治療費は通院レベルとはけた違いの大きさになります。
合併症主な治療入院費用の目安(3割負担)
脳梗塞急性期入院・リハビリ50〜70万円
脳出血緊急手術・長期入院70万円以上
心筋梗塞カテーテル治療・入院50〜60万円
慢性腎臓病(透析が必要な場合)週3回の人工透析特定疾病療養費制度適用後:月1〜2万円
※上記はあくまで目安です。受診する医療機関や検査内容・投薬内容により異なります。
高額療養費制度を利用しても、入院・手術の自己負担は数十万円規模になることがあります。後遺症が残れば、リハビリや介護費用が長期にわたって発生します。なお、慢性腎臓病が進行して透析が必要になった場合は、「特定疾病療養費制度」が適用されます。透析の医療費は月約40万円程度ですが、特定疾病療養受療証を取得することで自己負担は月1万円(一定以上の所得がある方は2万円)に抑えられます。月2,000〜4,000円程度の治療費で血圧を管理し続けることが、長期的に見ると圧倒的に低コストです。受診が必要なサインとして、頭痛や目のかすみ、鼻血が続く、胸の痛みや息切れを感じるといった症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。

