気づけば、私は話していた。
悠真から聞いたこと。翔くんとの関係。一緒にやらないと仲間外れにされるかもしれないという不安。
言葉にしながら、自分の中でも整理されていく。
「だからといって、他の子に意地悪をしていい理由にはならないって、わかってるんですけど……」
最後の方は、ほとんど独り言のようだった。
森下さんは、静かに頷きながら聞いてくれていた。
「難しいですよね」
ぽつりと、そう言った。
「その場で浮かないようにするために、周りに合わせてしまう気持ち」
否定されるでもなく、ただ受け止められる。
それだけで、少しだけ肩の力が抜けた。
「大人でも、ありますから」
その言葉に、はっとした。
大人でもある、同調圧力
息子・悠真が抱えている問題と原因が判明しても、解決の糸口がつかめず、真帆はもがいていました。そんな中、森下さんから告げられた言葉にハッとします。たしかに、大人でも同調圧力に屈してしまうこと、ありますね。幼い子どもなら、なおさらです。
さらに、森下さんと会話を続ける中で、大きなヒントを得ます。それは…。
言葉遣いを正すことよりも大切なこと
確かに、そうかもしれない。
場の空気を読んで、言葉を選んで、本当の気持ちとは違う行動を取ることだってある。
「ただ」
森下さんは、少しだけ間を置いた。
「その先で、どうするかは別の話なんです」
「……どうするか?」
「誰の側に立つのか。どう振る舞うのか」
ゆっくりと、言葉を紡ぐ。
「それは、その子自身が決めていくことになります」
その言葉は、厳しいものではなかった。
でも、まっすぐに届いてくる。
「周りに合わせてしまうこと自体を、完全にやめさせるのは難しいかもしれません」
「……はい」
「でも、その中で“どうありたいか”を考えることはできると思うんです」
その言葉を聞いたとき、胸の奥で何かがほどけた気がした。
私はずっと「やめさせなきゃ」と思っていた。
同じことをしないように。
悪いことをしないように。
でも──それだけじゃなかったのかもしれない。
「強い言葉を使わない」「無視をしない」など、とにかく息子の言動を正すことに囚われていました。ですがこれでは、根本の解決には至りません。子どもでも「自分でどうするべきか」を考え、実行に移すことは非常に大切な経験です。
真帆は、息子に「選ぶこと」を伝えます。すると早速、息子は選択しなければいけない場面に遭遇。翔くんが、他の友だちに強い言葉を使い、同調するよう圧をかけられましたが、悠真は「何も言わない勇気」を選んだのです。

