聡美は両家の親をあつめた食事会を提案。何もしらない茂樹は、目の前でほほ笑む聡美の正体が「リナ」だと気づく気配もない。なごやかな空気の中、デザートとともに配られたのは、夫の裏切りを記録した「地獄の資料」だった。
目の前にいる相手の正体に気付かない夫
「ねえ、シゲくん。来週の日曜日、おたがいの両親をよんで食事会をしない? 太陽の成長報告も兼ねて…さ。最近、お義父さんたちも太陽に会いたがってるし」
夕食の席で切り出すと、茂樹はスマホから目をはなさずに答えた。
「ああ!いいよ。適当に店予約しといて」
「ありがとう。じゃあ、私の友人がやってる個室の和食屋さんにするね」
茂樹はあいかわらず「リナ」とのやり取りに夢中だ。相手が目の前にいる「妻」だとも知らずに…。
私は着々と準備を進めた。
茂樹が「リナ」におくった不倫の証拠…そして、私の悪口。すべてを時系列にまとめ、見やすくプリントアウトした。念のため、USBメモリにも保存してある。
ついに復讐の幕が上がる!
「聡美〜当日の服、これでもいいかな?」
茂樹が能天気に聞いてきた。
「いいんじゃない? 清潔感があって、パパらしいわよ」
(地獄におちるのにふさわしい…最後のおしゃれね)
食事会当日。私の友人が営んでいる和食店の一室に、両家があつまった。
「太陽くん、おおきくなったわねぇ〜!」
茂樹の両親も、私の両親も、孫の姿に目をほそめている。なごやかな空気。茂樹は「自慢の父」「自慢の夫」を演じて、あいそうよくふるまっている。
「いやあ、聡美さんにはいつも感謝してるんですよ。家事も育児もカンペキで。僕はしあわせものです」
義父の前で私の肩を抱く茂樹。その手が、汚らわしくてたまらない。

