悠也は幼い頃から自分の持ち物を大切にする子で、几帳面すぎるほどていねいに片付けます。おもちゃの紛失はかなり稀でした。
「もう1回探してごらん。本体に差しっぱなしなんじゃないの?」
「どこにいっちゃったんだろう……パパに買ってもらった、大事なソフトなのに」
半泣きで床を這い回る息子の姿に、胸が締め付けられました。それは誕生日に、彼がずっと欲しがっていた人気のRPGソフト。毎日少しずつ進めるのを、彼は何よりの楽しみにしていました。
そして私は、嫌な胸騒ぎを抑えることができませんでした。
今日遊びに来た金太くんのことです。2階からの笑い声の途中「うわ!これ買ってもらったの?いいなあ」という声が聞こえていたのです。うちの子はゲームソフトを金太くんに見せていた。だとしたら、その時までは手元にあったはず…。
金太くんはわが家から帰る際、リュックをぎゅっと抱きしめていたような気がしてきました。まだ小学2年生で、しかもあんなに礼儀正しい子に限ってそんなことはあり得ないと思いたい気持ちと、どうしようもない胸騒ぎが止まりませんでした。
消えたゲームソフトとイヤな予感…
息子の友だちが帰ったあとに消えてしまったゲームソフト…。疑いたくはありませんが、胸騒ぎがします。
翌日、学校から帰ってきた悠也から「金太くん、新しいゲームを買ってもらったみたい」と報告を受けます。しかも、例の消えたゲームソフトと同じだそうです。遙は、慎重に行動しようと考えます。そして息子から、金太くんはよく田中くんとも遊んでいることを聞きます。田中くんのママは、遙のママ友です。
まずはママ友から情報収集
「田中さん。夕飯時にごめんなさい。ちょっと聞きにくいんだけど……金太くんのことで」
電話の向こうで、桃子さんが息を呑む気配がしました。詳しく今回起きたことについて話すと、桃子さんも話し始めました。
「……実はうちもなの。去年の冬、息子のゲームソフトがなくなって。箱だけはあるんだけど…。できるだけ角が立たないように白井さんに『間違ってカバンに入ってない?』って聞いたらもめちゃって…」
「どういうこと?」
「『うちはゲーム機本体がないから、ソフトなんて盗むわけないですよね』って。金太くんのママは教育ママみたいで、ゲームは一切させてないんだって」
桃子さんの言葉に、私は唇を噛み締めました。白井さんの主張が本当なら、金太くんはソフトだけを持っていても遊べないはず。でも、現実には悠也のソフトが消え、金太くんがそれを持っている上に「買ってもらったんだ」とウソまでついているのです…。
私はとりいそぎ悠也のゲームソフトに小さな名前シールを貼りました。今後のトラブル防止の意味もありますが、金太くんが万が一また同じことをしたときのために、罠を仕掛けたのです。
子どものために、私は真実を暴きたいと考えていました。
田中くんの家でも、ゲームソフトが紛失してしまったそうです。しかも、ソフトを巡り、金太くんの親とトラブルになりかけました。
そこで、ゲームソフトに名前シールを付けることに。すると後日、金太くんが遊びに来たあと、またしても1本のゲームソフトが消えてしまったのです。直接、金太くんの親に抗議することを考えましたが、ママ友の話を思い出した遙。学校に間に入ってもらおうと考えます。

