なかなか治らないニキビ。薬を塗っているのに改善しない背景には、ホルモンバランスの乱れや誤ったスキンケア、睡眠不足、食生活の偏りなど、いくつもの要因が複雑に絡み合っています。本当に見直すべきポイントはどこにあるのか――。GRACY TOKYO CLINIC院長の大西先生に解説してもらいました。
※2026年5月取材。

監修医師:
大西 真代(GRACY TOKYO CLINIC)
2009年、東海大学医学部を卒業。大手美容クリニック院長、HAAB BEAUTY CLINIC院長歴任後、2024年にGRACY TOKYO CLINIC院長に就任。日本美容外科学会会員、日本美容皮膚科学会会員、アラガン施注資格認定医師。
ホルモンバランスのせいでニキビが治らない?
編集部
ホルモンバランスが乱れると、ニキビが悪化するのでしょうか?
大西先生
はい、ホルモンバランスの乱れはニキビの原因の一つです。男性ホルモン(アンドロゲン)の影響で皮脂分泌が増えると毛穴が詰まり、ニキビができやすくなります。また、女性ホルモンの一種(プロゲステロン)も男性ホルモンに似た働きをして、皮脂分泌が増えてニキビができやすくなります。生理周期に一致したり、繰り返し同じ場所にニキビができたりする場合は、ホルモンの影響を疑う必要があります。
編集部
思春期のニキビと大人ニキビでは原因が違うと聞きます。どちらがよりホルモンの影響を受けるのでしょうか?
大西先生
思春期のニキビのほうが、大人ニキビよりもホルモンの影響を受けやすいと考えられています。大人ニキビもホルモンが関係することがあり、特にフェイスラインや顎周りに繰り返しできるニキビはホルモンの影響が疑われます。ただし、ホルモンバランスの乱れだけが原因ではありません。ストレス、睡眠不足、不摂生などが複合的に関わって大人ニキビができると考えられています。
編集部
ホルモンが原因の場合、どのような対策があるのでしょうか?
大西先生
ホルモンバランスの乱れが関係するニキビは、完全に予防するのは難しいため、できないようにすることにこだわるより、できてしまったら早めに治療することが大切です。白ニキビのうちに塗り薬を使うと、炎症が強くなる前に改善しやすくなります。必要に応じて、ビタミンC、ビタミンB群、ビタミンE、イソトレチノイン(※)などの内服薬を併用することもあります。※イソトレチノインは、日本国内では承認されていない医薬品です。海外では重症ニキビに用いられますが、催奇形性があり妊娠中・妊娠の可能性がある人は服用できないほか、肝機能障害などの副作用も報告されています。医師の管理の下で使用する薬で、国内未承認のため、使用により健康被害が生じても医薬品副作用被害救済制度の対象とはなりません。検討時は医師から十分な説明を受けてください
スキンケアとニキビ
編集部
間違ったスキンケアでニキビが悪化することもあるのでしょうか?
大西先生
はい、スキンケアの方法が合っていないと、ニキビが悪化することがあります。特に大事なのは、洗顔と保湿のバランスです。
編集部
洗顔と保湿のバランスについて詳しく教えてください。
大西先生
洗顔と保湿のバランスが崩れ、どちらかに偏るとトラブルにつながりやすくなります。例えば、保湿は大切ですが、「多ければ多いほどよい」というものではありません。特に、ワセリンのように油分で肌を覆うタイプの保湿剤は、毛穴の出口がふさがり、皮脂や油分がこもりやすくなることがあります。同様に、過剰に洗ったり、洗浄力の強い洗顔剤を使ったりすると乾燥を招きます。
編集部
バランスが大切なわけですね。
大西先生
そうですね。理想を言うと「皮脂の分泌が活発なTゾーンはしっかり洗う」など、顔のパーツによって洗顔の方法を変えるとよいでしょう。また、時間帯や季節によって変化させるのもよい方法です。私自身も、「夜は洗顔をややマイルドにして保湿を厚めにする」「夏は皮脂が増えやすいため洗浄力を少し上げ、冬は控えめにする」など、朝夜や季節によって調整しています。無理のない範囲で、自分の肌に合うバランスを見つけてください。
編集部
スキンケア製品を選ぶ際、大事なポイントは何でしょうか?
大西先生
使い心地です。ベタつく使用感が苦手な人もいれば、しっとり感があるほうが安心できる人もいます。人によって肌質や好みは違うため、「保湿できればよい」と一律に考えず、自分の肌に合うものを選びましょう。特にニキビ肌では、油分の多すぎる保湿剤が毛穴詰まりにつながることもあります。乾燥を防ぎつつ、塗りすぎないことも意識してみてください。
編集部
そのほか、スキンケアで気を付けるポイントはありますか?
大西先生
保湿剤を足せば肌がよくなるとは限りません。例えば、ヘパリン類似物質などの保湿剤は、短期的に使う分には有効なこともあります。ただし、ヘパリン類似物質には血行を促進する作用があるため、かえって赤みが悪化したり、赤ら顔(酒さ[しゅさ]など)を起こしたりする場合があります。ワセリンも、乾燥が強い部分に一時的に使うのはよいですが、顔全体を覆うように日常的に塗ると毛穴詰まりや角栓、黒ずみの原因になることがあります。毛穴は皮脂を出す場所であり、その皮脂により皮膚のバリア機能が保たれています。必要以上にふたをしないことが大切です。
編集部
肌を守るつもりが、かえって毛穴を詰まらせてしまうとは盲点でした。
大西先生
肌が乾燥するのは、「保湿が足りていないから」というよりも、そもそも「肌のバリア機能(外部刺激から肌を守る機能)が乱れているから」という場合が多い傾向にあります。保湿を足すだけでは、いつまでたっても肌本来の機能を整えられません。「保湿が足りない」と感じたら、まずはピーリング(薬剤などで古い角質を取り除く治療)によってターンオーバー(肌の生まれ変わり)を促し、健康な肌機能を取り戻すことが必要です。例えば、医師の管理の下でピーリング剤の使用や、ホームケアでレチノール(ターンオーバーを促すビタミンAの一種)などを用い、ターンオーバーを促す治療を行うのもよいと思います。守りの保湿と、肌を育て直す治療を組み合わせることで、バリア機能の回復を目指しましょう。

