凛子の豹変にきずつく佳子を、夫の宏大は「それは彼女自身の問題だ」とやさしく諭す。うしなった思い出のおおさに涙する佳子だったが、次第に「だれの顔色もうかがわなくていい自由」に気づき、前を向くための心の整理を始める。
それでも晴れない心
その日の朝食は、砂をかむような味だった。
「佳子? どうした、まっさおだぞ」
宏大が私の顔をのぞき込む。私はだまって、凛子から来たLINEの画面を見せた。(ブロックする前にスクリーンショットを撮っていた)。
一通り目をとおした宏大は、あきれたようにため息をついた。
「これはひどいな。言いがかりもいいところだ」
「私、そんなに無神経だったかな。しらずしらずのうちに、彼女をきずつけてたのかな…」
「お前はたしかにおっとりしてるし、時々空気がよめないところもあるかもしれない。でも、お前なりに凛子さんのことを大事にしてたのは、俺がよくしってる」
宏大は私の肩に手をおいた。
夫の言葉でようやく心がかるくなる
「凛子さんは、お前を攻撃することで、自分の現状の不満を解消しようとしてるだけだ。お前の生活がまぶしくて、勝手に嫉妬して…それを"マウント"だと決めつけた。これはお前の問題じゃなくて、彼女自身の心の問題だよ」
「でも……」
「言いたいことがあるなら、言い返せばいい。お前だって、凛子さんのわがままに付き合って、気をつかってきただろ? 焼肉の準備だって大変だったんだ。感謝されることはあっても、罵倒される筋合いはない」
宏大の言葉は、私の心を少しずつ溶かしていった。
「…同じことはしたくない。言い返したら、私も彼女と同じ土俵に立っちゃう気がする。もう、おわらせたいの」
「お前がそう決めたなら、それが正解だ。佳子…よくがんばったな」

