事件から一か月。監視下におかれた茂樹は、必死に「良いパパ」を演じる日々をおくる。かつての愛は消えさり、聡美の心はひえ切っているが、息子のために「仮面夫婦」をつづける。主導権をにぎり、自立へと歩み出す聡美の心ははれやかだった。
騒動から一か月
食事会から一か月がたった。
あの日の地獄のような空気は、今でも茂樹の脳裏にやき付いているようだ。
茂樹のスマホには、私との共有管理アプリが入れられ、SNSの利用は一切禁止。おこづかいも最低限にへらし、仕事がおわれば寄り道をせずに帰宅する毎日。
「ただいま……聡美、今日の夕飯は…」
「キッチンにおいてあるから、自分でよそって。太陽〜!パパが帰ってきたよ〜」
「パパー! あそぼ!」
太陽がかけ寄ると、茂樹はムリにつくった笑顔で息子をだきあげる。
ひえ切ってしまった心
客観的に見れば、平和な家庭にもどったように見えるかもしれない。
茂樹は必死に「良いパパ」を演じている。私のきげんを取り、家事も積極的にてつだうようになった。両親からもきびしく監視されているため、二度とあんなおろかなマネはできないだろう。
だが、私の心の中は、あの日を境にひえ切っている。
茂樹がどれだけやさしく接してきても、頭にはあの卑猥なプロフィールの文章と、リナにおくってきた「妻は女として見れない」という言葉がうかぶ。
夜、となりでねむる彼の気配を感じるだけで、背中に冷たいものが走る。 それでも、私はわらって過ごす。太陽のために。
「ママ〜お外いこう!」
「いいよ!公園でいっぱいあそぼうね」
太陽の無邪気な笑顔だけが、今の私のすくいだ。
この子が成人するまで…あるいは、私が経済的に自立するまで、この「仮面夫婦」という契約をまっとうするつもりだ。

