段階的に進む治療
編集部
骨盤底筋体操とはどのようなトレーニングですか?
矢野先生
骨盤の底で膀胱や尿道を支える筋肉を鍛えるトレーニングです。寝た状態や座ったままご自身で行う体操から、特別な機械を使ったものまでさまざまな方法があります。仰向けに寝て膝を立てます。(骨盤底筋体操のポイント)
おならや尿を我慢するように肛門・尿道を締めながら、お尻をゆっくり持ち上げます。肩から膝までが一直線になるところで5~10秒保ち、ゆっくり下ろします。10回を1セットとして、1日2~3セット行ってください。呼吸は止めず、お腹や太ももではなく骨盤の底を締めることを意識しましょう。
編集部
薬物療法について教えてください。
矢野先生
膀胱の過剰な尿意や収縮を抑える薬を用いて、尿意切迫感や頻尿の改善を図ります。第1選択薬として、膀胱の緊張を緩和させる抗コリン薬やβ3作動薬が挙げられます。症状や体質に応じて薬を選択し、副作用の有無を確認しながら調整します。行動療法と併用し、より高い治療効果が期待できる場合もあります。
編集部
神経変調療法・ボツリヌス療法とはどのような治療ですか?
矢野先生
神経変調療法は、膀胱の働きをコントロールする末梢神経に刺激を与え、排尿中枢の働きを改善して排尿機能を正常化する治療です。ボツリヌス療法は、膀胱の壁内に神経毒であるボツリヌス毒素を注射し、膀胱の過剰な収縮を抑える治療です。効果の持続期間に個人差はあるものの、平均で6~7カ月は症状改善が期待できるとされています。どちらも薬物療法の効果が不十分で尿失禁が持続する場合に検討されます。適応やリスクについて十分に説明を受け、理解したうえで治療を選択してください。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
矢野先生
実は、患者さんから一番多く相談を受ける下部尿路症状は「夜間頻尿」です。夜間頻尿”は就寝中に1回以上排尿のために起きる症状を指し、日本では4000万人以上の人にみられるとされています。夜間頻尿を認める高齢者は、転倒リスクの上昇により、骨折の発生頻度が約2倍になるとの報告もあります。夜間頻尿と過活動膀胱は密接に関連しており、夜間頻尿の約3割に過活動膀胱が認められるとされています。高齢化が進む日本において、過活動膀胱の適切な診断と治療は、患者さんのQOL(生活の質)向上や転倒予防の観点からも、今後ますます重要性が高まると考えられます。
編集部まとめ
過活動膀胱は年齢のせいと見過ごされがちですが、適切な治療により症状改善が期待できる病気です。生活指導から薬物療法、さらに専門的な治療まで段階的に選択肢があるため、症状に応じた対応が重要です。気になる症状がある場合は、早めに医療機関への相談をおすすめします。

