“普通のメガネ”を目指した理由——違和感を消すための技術

(次世代スマート眼鏡「SABERA(サベラ)」)
続く第二部では、今回のサミットの目玉である鯖江発の次世代スマート眼鏡「SABERA(サベラ)」の全貌が明かされました。クラウドファンディングでは1,700人以上のサポーターが集まり、応援購入金額は1億2,000万円を突破したと説明され、会場でも大きな注目を集めていました。
しかし、プロジェクトの背景には、眼鏡業界が10年以上抱え続けてきた葛藤があったといいます。
眼鏡の製造から販売まで一貫して行う株式会社ボストンクラブの小松原一身さんは、2015年頃からウェアラブル関連の展示会に出展し、多くの企業と接点を持ちながらも、さまざまな理由でプロジェクトが立ち消えになる局面を何度も経験してきたと振り返りました。そのうえで、「全員が下を向いてスマホを見ている今の状況を、眼鏡の力で変えたい」と、産地のプライドをかけた決意を語りました。

(株式会社ボストンクラブ 小松原一身さん)
こうして誕生した「SABERA」は、ガジェット特有の無骨さを極力抑え、日常に溶け込むことを目指したデザインが特徴です。一般的な眼鏡と遜色ない「40g」前後の軽量性が強調され、前後の比重バランスを緻密に設計してズレを防ぎ、チタン素材のテンプルによる柔軟なバネ性を持たせることで、長時間かけても痛くなりにくい“眼鏡としての当たり前”が追求されていると説明されました。
レンズには高度な光学技術を採用し、AR情報と日常の視界を重ね合わせるための高度な光学技術が採用されており、視界を妨げずに軽量化するため、右単眼ディスプレイを選んだといいます。操作はタッチセンサー式で、標準で約8時間、最大12時間の連続稼働が可能。「眼鏡をかけている間はずっと稼働している状態」を目指したそうです。

(株式会社jig.jp 渡邊隆文さん)

(Cellid株式会社 喜田弘亮さん)
目の前の人を見るために——テクノロジーが取り戻す視線
第三部では、テクノロジーが私たちの生活や感性をどう変えていくかという、少し先の未来の話へと展開。AIの具体的な使い道や、ウェアラブルデバイスを使ったアートの最前線が語られました。
元Meta社の近藤義仁さん(ナル先生)は、自身が開発した、肩に載る小さなキューブ型のAI秘書「なるえびちゃん」とともに登場。近藤さんは自宅のMac Studioで24時間AIを稼働させ、Googleカレンダーやメールと連携させているそうです。
飲食店でQRコードから注文する場面については、AI秘書が本人の好みを学習しているとして、「『予算内で、苦手なモツやレバーを除いたメニューにして』と頼むと、勝手に注文してくれるんですよ」と具体例を紹介。このエピソードに会場からは驚きの声が上がりました。さらに近藤さんが「機能のない眼鏡を付ける人がなくなる未来が来るのでは?」と語ると、その知見にうなずく来場者の姿も見られました。

(元Meta社 近藤義仁さん(ナル先生))
VRアーティストのせきぐちあいみさんは、VRゴーグルを装着し、踊るように空中に光の絵を描く圧倒的なアートパフォーマンスを披露。海外での活動が多いせきぐちさんは、リアルタイム翻訳機能の重要性を日々実感していると言います。
「翻訳者が入るとテンポが遅れ、話に感情がのらないこともしばしば。ARグラス越しなら、相手の目を見て情熱を感じながらダイレクトに対話できるのが、とっても良いんです」と、身体性を伴うコミュニケーションの未来について語りました。

(VRアーティスト せきぐちあいみさん)
