腎臓は、状態が悪くなってもSOSサインがすぐには出ない「沈黙の臓器」です。症状が出てから病院の検査で腎臓機能の低下が分かっても、残念ながら腎機能を完全に元に戻す薬は現在まだありません。腎機能が一度低下してしまうと、生きていくために大変な透析治療を受けなければならない人もいます。
人生の最後まで腎臓を健やかに保つためには、「未病(まだ病気になっていない状態)」段階でいかに早く発見し、進行させないかが非常に重要です。では、いち早く気づくには、一体どうすればよいのでしょうか? 今回は舛森(ますもり)先生に、腎臓の働きと、腎機能の悪化にいち早く気づくための「5つの方法」を伺いました。

監修医師:
舛森 悠(YouTube医療大学)
2019年旭川医科大学卒業後、札幌にて初期研修をおこない、函館稜北病院総合診療科へ。北海道内の3次救急を担う救命救急センターなどを経て、現在は千葉大学大学院 医学薬学府 先進予防医学共同専攻 博士課程にて研究に従事。並行して北海道での地域医療に貢献し、登録者86万人を誇る「YouTube医療大学」を運営。一般社団法人とまりぎケア代表理事、総合診療専門医、新家庭医療専門医、認知症予防専門医、医師会認定産業医。
≫見逃すと危険!! 放置すると手遅れになる腎臓が弱っている危険サイン5選腎臓は「尿を作る」だけじゃない。知られざる“3つの働き”
編集部
腎臓と聞くと「尿を作る臓器」というイメージが強いのですが、実はほかにも重要な役割があるとお聞きしました。
舛森先生
腎臓は単に尿を作るだけでなく、私たちが生きていく上で非常に重要な指令を出したり、体を強くしたりする役割を担っている臓器です。大きく分けて3つの機能があります。
1つ目は、皆さんがご存じのとおり、体の余分なものを尿として排泄する機能です。体内で生成された毒素や余分な水分、そして不要になったナトリウムやカリウムといったミネラルを濾過(ろか)して、尿と一緒に体外へ排出します。
編集部
老廃物を濾過するフィルターのような役割ですね。2つ目の機能は何でしょうか?
舛森先生
2つ目は、血液を作るための指令を送る機能です。腎臓は「エリスロポエチン」というホルモンを出して、人間の血液を作る骨の中にある「骨髄」に対し「血液を作ってください」と指令を送ります。これがなければ骨髄で血液が作られないため、貧血になってしまいます。実際、私の患者さんの中にも、腎臓が悪くなったせいで貧血になり、血液を作るための薬を処方している人は少なくありません。
編集部
腎臓が血液づくりに関わっているとは驚きです! 3つ目の機能についても教えてください。
舛森先生
3つ目は、強い骨を作る役割です。「腎臓と骨に関係がある」という話はあまり聞いたことがないかもしれませんが、腎臓はビタミンDの活性化において大事な働きをしています。口から摂取したカルシウムを吸収するには、このビタミンDの働きが不可欠です。腎臓がビタミンDを活性化するおかげでカルシウムが効率的に吸収され、骨が強くなります。そのため腎臓が悪い人は、骨密度が正常値であったとしても、骨折のリスクが2〜3倍に上昇するといわれています。
なぜ症状が出ない? ヒントは腎細胞の「助け合い」性質
編集部
腎臓は血液や骨にまで関わる重要な臓器なのに、悪くなってもなかなか症状が出ないのはなぜでしょうか?
舛森先生
それは、腎臓の細胞たちが健気に「助け合い」をしているためです。
例えば、「健康な腎臓」の機能を100%とします。この腎臓がだんだん悪くなって、100%あった機能が、90%、80%と低下してしまったとしましょう。そして、仮に70%にまで機能が低下したとしても、残り70%の腎細胞が「あいつらの分まで頑張ろう!」と、失われた30%の機能を一生懸命補ってくれるのです。
この「助け合い」のおかげで、多少腎臓が悪くなっても生活に支障が出ず、症状にも表れません。

