残すところあと2話となった「銀河の一票」(関西テレビ)。
10話、そして11話は最終話の前編・後編的な位置付けとなるそうだ。
4月から放送が開始されたこのドラマ……。
このドラマに限らず観ているドラマの放送終了が近づく度に「1クール(3ヶ月)早っ!!!」と欠かすことなく思ってしまう。
この早すぎる時の流れの中で、様々なモノやコトが変わったり、変わらなかったりする。
その変化に置いていかれぬよう、時代と共に人は行動や価値観のアップデートを常に求められる。
以前は許された発言も今では時代にそぐわないと淘汰されていき、それに適応できない、しない者は“老害”扱いされ若年層から煙たがられる。
だがしかし先述のように“変わらない”ものも確かにある。
全てを老害扱いして、先人の言葉や行動にリスペクトを欠く若者もいただけない。
先人たちが大事にしてきた今でも通用するものも確かにあるからだ。
そんなの当たり前のことだけれど。
行動や価値観のアップデートはしつつ、大切な変わらないもの……。
その両方をうまく取り入れながら生き抜くことが、今の時代は求められているように思える。
「銀河の一票」第9話では都知事選に出馬したAI企業社長の風間藍生(梶裕貴)が、AIという最新技術とオールドスタイルの狭間でうまく立ち回っていた。
オールドスタイルを冷笑した自分を恥じる
風間は最先端のAIを使いこなす一方、彼の周りの元都連会長:葛巻(堀部圭亮)らはまさにオールドスタイルな立ち回りで都知事選に備えていた。
PCや電話越しに頭を下げたり、駅前で必死にチラシを配ったり……。
風間は都知事選の票を割るため、蛍(シシド・カフカ)に頼まれてノリで出馬したに過ぎず、必死に頑張るオールドスタイルの先輩たちに対してどこか申し訳なさを感じているようだった。
風間は決して彼らの(もしかしたら)時代にそぐわない非効率なやり方を冷笑していたのではない。
私は映し出される葛巻らのそういった姿に風間が呆れるシーンが描かれるものだとばかり思ってしまっていた。
そう思ってしまった自分を本当に恥じている。
なんでも効率化や自動化が進んでいる時代でも、決して変わらない、変わってはいけない人との向き合い方……。大袈裟に言えば義理と人情と言うべきか。
それを葛巻らは見せてくれたように思える。
都知事候補者の日山流星(松下洸平)も組織票のためにオールドスタイルで頭を下げに行ったと言っていたので、選挙においてはそういったオールドスタイルなやり方もまだまだ必要だということだ。
このシーンで流星が、“風間は中卒”だという情報をマイナスな要素として話してきた雫石に「やばいよその価値観」と言い放つ様は痛快だった。
風間は奮闘する葛巻らを自分のような者が背負いきれるはずがないと思っていたが、むしろ葛巻らの方が風間のことを「担ぐべき器だ」と見抜いていたのだった。
この目に見えてハイブリッドな風間陣営がこの都知事選でどういった風を巻き起こしてくれるのか……非常に楽しみである。
あの介護士、何者?
見どころ満載な第9話の中で一際存在感を放っていた人物がいる。
それはスナックとし子のとし子ママ(木野花)が入所する介護施設の介護士、大樹(伊能昌幸)だ。
自ら手伝えることはないか? とボランティアに参加した彼には、“都知事選ポスターの掲示板の4番か5番を引き当てること”と“選管から受け取った選挙7つ道具を届けること”が北斗(阿久津仁愛)と共にミッションとして課された。
ちなみに選挙7つ道具の内容を調べてみると、
1.選挙事務所の表札
2.街頭演説用標旗
3.選挙運動要員腕章
4.選挙運動用自動車(船舶)表示板
5.選挙運動用拡声器表示板
6.自動車船舶乗車(乗船)用腕章
7.個人演説会立札等表示板
……というどれも一般の我々があまり目にすることのない極めて事務的なものであった。
そんな大樹、700名必要なポスター貼りのボランティアがあと200名足りないと聞くと、「集めましょうか?」の一言からすんなり200人もの人を集める謎の人脈を抱えていた。
大樹の呼びかけで集まった中には、コワモテな兄ちゃんが多かった印象である。
掲示板の番号抽選会でも、5番を引き当てた流星の秘書:藤堂昴(倉悠貴)に対し「譲ってもらえませんか?」との圧をかける一幕も。

一体彼は何者なんだ? と誰もが思ったであろうが、その人脈と物怖じしない姿勢から、大樹は一昔前、いわゆる「不良少年」だったのではないか? と私は推測した。
大樹には少しヤンチャをしていた過去があるが仲間と共に更生し、今でもその仲間達と良好な関係を続けている……それ故に今回の呼びかけにもすぐにこたえてくれたのではないか。
初対面の藤堂に「譲ってもらえませんか?」と普通では考えられない絡み方をするのも、大樹が不良時代に身につけた度胸あってこその行動なのかもしれない。
「不良時代を経て、今は更生して真面目に働いています!」みたいなこれ見よがしの美談は、近年世間ではあまり好まれない傾向にあるように感じる。
昔から人に迷惑をかけずに真面目にやってきた人にスポットが当たらない一方、少なからず人に迷惑をかけてきた不良が更生したとてその物語が美談になってしまうのは、その不良に嫌な思いをさせられた側からするとどうなの? という見方が増えてきたからだろう。
しかし、更生したその不良達が社会の役に立っているという物語が存在するのも事実。
このドラマではこれ見よがしに不良の更生を見せずに、大樹の行動をもって視聴者が察する絶妙な塩梅で“元不良の更生”を演出したのではないだろうか。
過去があったから今がある……それが例えどんな人生を歩んできたかは関係なく、それぞれの登場人物が平等に“地続きの人生”を歩んできたのだと感じられるドラマだ。
大樹初登場時、まさかこんなにも大樹について言葉にするとは思いもしなかった。大樹を演じる伊能昌幸氏はアクションに長けている俳優だそうだ。
過去の不良時代のアクションシーンを含む大樹のこれまでを描いたスピンオフをぜひとも観たい。
……私は大樹にハマり過ぎている。

