腎臓は、血液をろ過し、老廃物や余分な水分を尿として排出する役割を担っています。腎機能が低下すると、本来は尿として出るはずの物質が体内にたまり、むくみや高血圧、ミネラル異常につながることがあります。腎臓病の治療は、薬による治療と併せて、日々の食事を整えることが欠かせません。
この記事は、腎臓病で食事制限が必要になる理由や、注意したい栄養素、控えたい食品の具体例、自宅で続けやすい食事の工夫を解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医・指導医、日本緩和医療学会認定登録医、禁煙サポーター
腎臓病で食事制限が必要な理由と注意したい栄養素

腎臓病ではなぜ食事制限が必要なのですか?
腎臓病で食事制限が必要になる理由は、低下した腎機能を補い、腎臓への負担を減らすためです。腎機能が低下すると、食事から生じる老廃物やミネラルを十分に排出しにくくなります。例えば、たんぱく質を摂りすぎると、代謝によってできる窒素化合物が血液中にたまりやすくなり、腎臓のフィルターである糸球体にも負担がかかります。また、食塩の摂りすぎは体内に水分をため込み、血圧を上げる原因です。高血圧は腎臓の血管に負担をかけ、腎機能をさらに低下させます。カリウムやリンが体内にたまると、不整脈や血管の石灰化などの合併症につながることもあります。食事療法は、腎機能の低下をゆるやかにし、透析が必要になる時期を遅らせるために行います。
腎臓病で特に注意したい栄養素を教えてください
腎臓病の食事療法は、塩分、たんぱく質、カリウム、リン、エネルギーを管理します。塩分は、高血圧やむくみを防ぐために制限し、一般的には1日6g未満が目安です。たんぱく質は身体に必要な栄養素ですが、摂りすぎると老廃物が増えるため、腎機能の段階に応じて量を調整します。カリウムは、血液中の値が高くなると不整脈の原因になることがあります。リンは骨の健康に関わる一方で、過剰になると血管の石灰化や心血管疾患のリスクに関係します。また、たんぱく質を制限していても、摂取エネルギーが不足すると、身体は筋肉を分解してエネルギーを補います。その結果、かえって老廃物が増えることがあります。必要なエネルギー量は、性別や年齢、身体活動量、体格などによって異なります。一般的には、標準体重あたり1日25〜35kcalが目安です。
参照:『CKD診療ガイド2024』(日本腎臓学会)
食べてはいけない食品は病期によって変わりますか?
はい。食事制限の内容は、腎機能の低下の程度や、透析前の保存期なのか、透析中なのかによって変わります。保存期は、腎機能の低下をゆるやかにするために、病期が進むにつれてたんぱく質の制限が重視されます。例えば、ステージG3b以降は、1日あたりのたんぱく質を標準体重1Kgあたり0.6〜0.8g程度に抑えることが一つの目安です。一方で、透析を始めると、アミノ酸やたんぱく質が失われるため、保存期よりもたんぱく質を確保する必要があります。標準体重1Kgあたり0.9〜1.2g程度が目安です。ただし、尿量が減るため、水分やカリウムの制限は厳しくなる場合があります。病期や治療法によって控えるものが変わるため、医師や管理栄養士と相談しながら調整しましょう。
参照:
『CKD診療ガイド2024』(日本腎臓学会)
『慢性透析患者の食事療法基準』(日本透析医学会)
腎臓病で控えるべき食品の具体例

塩分が多く控えるべき食品にはどのようなものがありますか?
塩分を摂りすぎやすい食品には、加工食品や保存食、麺類の汁、調味料などがあります。ハムやソーセージ、かまぼこ、梅干し、漬物、佃煮、塩辛などは、少量でも塩分摂取量が増えやすいため、食べる量を控えましょう。ラーメンやうどん、そばの汁は飲み干さず、醤油や味噌、ソースも使いすぎないようにします。パンや市販のドレッシング、レトルト食品、インスタント食品にも塩分が含まれるため、購入時は栄養成分表示を確認しましょう。
カリウムを多く含む食品にはどのようなものがありますか?
カリウムは、野菜や果物、いも類、豆類などに含まれます。果物は、バナナやメロン、キウイ、柿、ドライフルーツなどに注意します。野菜は、ほうれん草や小松菜、ブロッコリー、かぼちゃ、切り干し大根、干し椎茸などに含まれます。
さつまいもや里芋、山芋などのいも類、納豆や豆乳などの大豆製品、昆布やひじきなどの海藻類、アーモンドやカシューナッツなどの種実類もカリウムを含みます。
飲み物は、100%果汁ジュースや野菜ジュース、抹茶、ココアなどにも含まれます。
たんぱく質やリンの摂り方で気を付けたい食品を教えてください
たんぱく質制限がある場合は、肉や魚、卵、大豆製品、乳製品などの量を調整します。米やパンにもたんぱく質が含まれるため、1日の合計量で考えることが必要です。リンは、食品にもともと含まれるものと、食品添加物として含まれるものがあります。特に、食品添加物として使われるリンは吸収されやすいため、加工食品やインスタント食品、コンビニ弁当、菓子パン、清涼飲料水などは控えめにしましょう。乳製品や小魚、レバー、全卵にもリンが含まれます。

