実態は今なお、ほとんど謎のまま――
一方で、今回の発見によって課題が解決したわけではありません。論文著者の一人であり、野生動物保全団体パトス・ワイルドライフのトラヴィス・ベイヤー氏は、「コスメル・ドワーフ・フォックスが直面している最大の課題は、現存個体数や分布、生態についてほとんど何も分かっていないことです」と指摘しています。
実際、このキツネが島内に何頭残っているのかは不明です。どの地域を生息地としているのか、どのような行動を取るのかといった基本的な情報も十分に集まっていません。
さらに、コスメル島では観光開発や土地利用の変化が進むほか、外来種の侵入やハリケーンなどの自然災害も生息環境を脅かしています。研究者らは、このキツネを絶滅危惧IA類(CR)に相当する極めて危険な状態にある動物とみています。
再発見は第2のチャンス
研究チームは今後、生息数や分布を把握するための調査に加え、本土のハイイロギツネとの関係を探る遺伝学的研究、生息地の保全などを優先課題に挙げています。また、人間の生活圏との接触を減らし、交通事故などのリスクを抑える対策も求められています。
ベイヤー氏は、「私たちは絶滅を劇的な出来事だと考えがちですが、希少種は人知れず静かに姿を消していくことがあります」とコメント。その上で、今回の発見について「保全の成功を意味するものではありませんが、このキツネにとっての第2のチャンスです」と語りました。
20年以上にわたって確かな記録が途絶えていたコスメル・ドワーフ・フォックス。今回の写真公開によって生存は確認されましたが、その全貌は依然として多くの謎に包まれています。研究者たちは、この貴重な島の固有動物を守るため、実態解明と保全活動を進めていく考えです。

