●尿の提出は「任意処分」として適法かが問題に
一方、尿の提出を求める場面では、法律上の検討は別になる。
薬物事件で警察が尿の提出を求める場合、本人が自由な意思で応じるのであれば問題はない。しかし、本人が嫌がっているのに執拗に提出を求めるようであれば、それはもはや行政警察活動ではなく、具体的な薬物使用の嫌疑に基づく司法警察活動といえる。
当然ながら、薬物の前科がある、というだけでは、具体的な嫌疑として十分とはいえない。 ただ、本人が拒否した場合でも、直ちに違法になるわけではない。警察官による説得や同行の求めが、「任意処分」として許される範囲にとどまるかどうかが問題となる。
裁判例では、尿の提出を求める必要性や緊急性(薬物犯罪の嫌疑がどの程度具体的に認められたのかや、その場で採尿を求める必要があったのか、ほかの方法では対応できなかったのかなど)と、本人が受ける権利侵害の程度を比較し、具体的な状況の下で相当といえる限り、適法になり得ると考えられている。
一方、その限度を超えて事実上強制されたと評価されれば違法となり、さらに実質的に強制採尿に当たる場合には、令状がない以上、許されない。
●違法かどうかは「強要された」と感じたことだけでは決まらない
田代さんは投稿で「尿検査を強要された」と受け止める一方、「これも受け入れる道筋なのかなと思い、ご協力させて頂きました」とも振り返っている。
しかし、法的に違法と評価されるかどうかは、「強要された」と感じたかどうかという本人の受け止めだけで決まるものではない。
今回のケースでは、警察がどのような事情から尿の提出を求め、どのような経緯で田代さんが応じたのかといった事実関係が明らかではない。
そのため、警察の対応が適法だったか、違法だったかを判断することは難しい。

