インド洋の深海で、これまでにないスケールの「クジラの墓場」が見つかりました。発見されたのは水深7000メートル近い海底。そこには最近死んだクジラの遺骸だけでなく、530万年前に生きていた絶滅種の化石まで残されていました。
研究者たちは、この場所が単なる化石の産地ではなく、数百万年にわたるクジラたちの歴史を記録した特別な場所だと考えています。人類の歴史で例えるなら、アウストラロピテクスの時代から現代人までの痕跡が同じ場所で見つかったようなもの。深海に眠る壮大なタイムカプセルが姿を現したと言えるかもしれません。
1200キロにわたって続く史上最大級のクジラの墓場
この発見を報告したのは、中国科学院深海科学工学研究所を中心とする国際研究チームです。研究成果は2026年6月10日付で科学誌『Nature』に掲載されました。
調査が行われたのは、インド洋南東部のディアマンティーナ断層帯。海嶺や海溝が複雑に連なる海域で、水深は最大7000メートルを超えます。
研究チームは有人潜水艇「奮闘者(Fendouzhe)」を使い、32回にわたる潜水調査を実施。その結果、現代のクジラの死骸が確認された場所を5カ所、さらにクジラ化石の産地を476カ所発見しました。
分布範囲は北西から南東へ約1200キロメートル。研究者らは、この一帯がこれまで認識されていなかった巨大な“クジラの死骸スーパー回廊”を形成している可能性があるとみています。
これまで知られていたホエールフォール(クジラが死後に海底へ沈み、生態系を支える現象)の多くは水深4000メートル未満で見つかっていました。今回の発見は、それを大きく上回る世界最深クラスの記録となります。
530万年前の絶滅種も。過去と現在が同居する海底
今回の発見で特に研究者たちを驚かせたのが、その年代の幅です。
見つかった化石の中には、約530万年前のハクジラ類「プテロケトゥス・ベンゲレ(Pterocetus benguelae)」の頭蓋骨が含まれていました。さらに研究チームは、新種とみられる絶滅種を発見し、「プテロケトゥス・ディアマンティネ(Pterocetus diamantinae)」と命名しています。
一方で、同じ海域では比較的最近に死んだとみられるクジラの遺骸も見つかりました。最大のものは全長約5メートルの南極ミンククジラの骨格です。
つまり、この海底には、数百万年前のクジラと現代のクジラが同じ場所に眠っていることになります。
米カルバート海洋博物館の古生物学者スティーブン・J・ゴッドフリー氏は、この発見について「本当にユニークだ」と評価。絶滅種と現生種の記録が重なり合うことで、ハクジラ類の進化や生態を長期的な視点で追跡できる可能性があると指摘しています。

