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みんなでシェアする“実家のような場所”元小児クリニックを改装 豊崎由里絵さんが始めた子育て支援の新しい形

■“預ける”だけじゃない。年齢も目的も混ざる居場所へ

――「シェア実家」は、どんな使い方ができる場所なのでしょうか。

豊崎 私を含め保育士が常駐しているのでお子さんの一時預かりはもちろん、イベントやワークショップ、習い事も開催しています。学習支援の時間もあるので、小学生もランドセルのまま来たりしますね。ふらっと親子で遊びに来ておもちゃで遊んで帰るのでも全然いいんです。去年の夏休みは気象予報士のお友達が自由研究講座をやってくれました。

――主に未就学児向けの子育て広場より、対象の年齢幅が広いのですね。子どもの一時預かりも、市区町村でやってくれてはいますが、いざ使おうとすると予約のハードルが高いことが多いですよね。

豊崎 そうですよね、私も経験者です。利用したい前月の1日の朝10時に電話して、繋がったときにはキャンセル待ち。結局1回も預けられたことがありませんでした。ここは今のところ、前日でも枠が空いていれば予約を受けられます。基本的には子どもの人数最大4人に対して保育士さん2人の体制です。少人数での丁寧な保育を私はどうしてもやりたくて、実現しました。

――利用してほしいのに届いていない層があると感じることはありますか?

豊崎 小さなお子さんにつきっきりで孤独を感じているママさんには特に、是非利用してほしいと思っています。
しばしば「うちの子、他の人はダメなんです。お母さんしかダメで、おじいちゃんおばあちゃんもダメで、どこにも預けられないんです」とおっしゃる方がいるのですが、でも最初はどのお子さんもそうじゃないですか。初めての預かりで、最初から最後までずっと泣いているなんてことも保育士からしたら当たり前です。「いっぱい泣いても全然いいですよ、ずっとそばにいますよ」とお伝えしたいです。
ただ、孤独な環境で悩んでいる方ほど、リーチするのが難しい。お家のドアを開けるきっかけをどう作るかというのが、とても難しいところだなと思います。

――住宅街でこんなにたくさんの家があっても、近所の交流は希薄だったりしますよね。

豊崎 はい。でも場所を作ってみたら、意外なほどいろんな方が「手伝うよ」と集まってきてくださいました。シェア実家のオープンにあたって近隣へ挨拶に回ったのですが、みなさんとても親切にしてくださって、「まあ、そんなことを始めるの? 私、保育士なの。手伝うわ」と、そのままここで保育士してくださってる方もいらっしゃいます。
玄関を隔てて、子どものことを好きな人がこんなに大勢いるなんて、ここを作るまでは知りませんでした。つながる機会がなかったから「みんな冷たい」って感じてしまったり、子育てに誰も興味ないのかなと思ってしまったりもするかもしれません。交流の場があることって大切なんだと実感しました。

■子育ては「親だけの責任」ではない——“社会化”という視点

――ここまでの経験を経て、仕事観・キャリア観はどう変わりましたか。

豊崎 あらためて思うのは、キャリアって掛け算なんだなっていうことですよね。私はアナウンサーになって毎日放送で生きていくって決めて、目の前のキャリアを順調に登っていくものだと思っていましたが、今振り返ると視野が狭かったかもしれません。
たとえば育児しかしていなかった時期も、キャリアが止まっている時間ではなくて、「育児を経験している時間」でした。「アナウンサーで、育児を集中して経験して、保育士としてパート勤務をしたことがある私」っていうのは、キャリアの掛け算ですよね。一本の道を最後まで走れなかったけれど、全然違う価値を持った人間になれているなって思うんですよね。

―― 一見するとバラバラに見える経験が、今の仕事につながっている感覚でしょうか。まさに掛け算ですね。

豊崎 だから、一般に“ブランク”と言われるような時期がある人も、それはブランクじゃなくて、別の何かをやっていた時期。家事かもしれないし育児かもしれないし、病気と闘う時期かもしれない。その別の何かをやってた時期って、必ず掛け算で組み合わせることができるので、その人にしかない経験が仕事の武器になっていくんだなって、やっとわかった感じです。

――今も子育てとお仕事を並行されていて会社員時代とは違う忙しさがあると思いますが、豊崎さん自身の子育ても、シェア実家をはじめたことで変化がありましたか。

豊崎 ある時、シェア実家で働いてくださっている保育士さんたちとお話する中で、私自身も3人目を産み育てることに興味があるけれどなかなか忙しくて踏み出せない、という話をしたことがあります。そうするとご自身の子育てを終えた年代の保育士さんが「あら、産まれたら私が手伝うから産みなよ!」と軽く言ってくださったのです。
地域に子育てを手伝うよと声をかけてくれる人がいる。その瞬間からなんだか心が軽くなり、もう一度自分の赤ちゃんを抱いてみたいという思いが強くなりました。もともと夫や子どもたちは3人目を望んでいたこともあって前向きに考えることになり、実はこの秋に第三子を出産予定です。

――おめでとうございます。これまでの経験を経て、三度目の出産・子育てはどのように捉えていらっしゃいますか。

豊崎 次男の出産から5年以上も経っているので、出産グッズや常識も変わっていて日々勉強し直しているところです。長男・次男が毎日のようにお腹の子の名前を提案してきてくれるのも何とも愛おしく、家族でチームとして出産を迎えられればと思っています。

――最後に、子育て中の方へメッセージをお願いします。

豊崎 私はシェア実家を通して子育ての社会化を目指しています。子育てって基本的に親がやるものだとみんな思っているし、何かあれば親の責任になります。だけど全部が親の責任だとすることで、追いつめられてしまうこともある。
たとえば生まれたばかりの赤ちゃんがロッカーに遺棄されるような事件があって、お母さんが逮捕されて事件は終わるけれど、それで何も解決しませんよね。子どもの幸せを考えるなら、親も含めて社会で包摂する視点が大切だと思います。
親にとっても、近所の人が一緒に子育てしてくれる方がハッピーに暮らせると思いますし、子どもにとっても、親以外に相談できる大人が地域にいれば逃げ道があるかもしれません。
だから、子どもは地域で育つもの、みんなで育てるものっていう意識をもっと持って、辛いことも楽しいこともシェアしていけたらいいなと思います。

配信元: マイナビ子育て

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