在宅で医師の診察を受けられる往診と訪問診療は、どちらも通院が難しい方を支える大切な医療サービスですが、利用できる場面や仕組みには明確な違いがあります。この記事は、それぞれの基本的な意味や対象となる方の状態、かかる費用の考え方を説明しながら、介護を受けているご本人やご家族、ケアマネジャーの方にも理解しやすいように解説します。また、急な発熱などのいざというときに向いているのはどちらか、慢性疾患の定期的な管理にはどちらが適しているかなどの実際の使い分けのポイントも詳しく解説します。

監修医師:
伊藤 規絵(医師)
旭川医科大学医学部卒業。その後、札幌医科大学附属病院、市立室蘭総合病院、市立釧路総合病院、市立芦別病院などで研鑽を積む。2007年札幌医科大学大学院医学研究科卒業。現在は札幌西円山病院神経内科総合医療センターに勤務。2023年Medica出版社から「ねころんで読める歩行障害」を上梓。2024年4月から、FMラジオ番組で「ドクター伊藤の健康百彩」のパーソナリティーを務める。またYou tube番組でも脳神経内科や医療・介護に関してわかりやすい発信を行っている。診療科目は神経内科(脳神経内科)、老年内科、皮膚科、一般内科。医学博士。日本神経学会認定専門医・指導医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本老年医学会専門医・指導医・評議員、国際頭痛学会(Headache master)、A型ボツリヌス毒素製剤ユーザ、北海道難病指定医、身体障害者福祉法指定医。
往診と訪問診療の違い

往診と訪問診療は、いずれも医師が自宅を訪れる在宅医療ですが、往診は急な体調不良など臨時の受診、訪問診療は計画的な定期診察の違いがあります。
往診の定義と特徴
通院が困難な患者さんの急な体調不良や緊急時などに、医師が患者さんの自宅や施設へ出向いて診察を行うことを指します。あらかじめ計画された定期診察ではなく、「具合が悪くなった」「今すぐ診てほしい」などの突発的なニーズに応じて行われる点が特徴です。
そのため、診察の日時は患者さんやご家族からの要請に応じて個別に調整されます。主な目的は、速やかな症状の評価と必要な治療・処方を行い、できる限り自宅での療養を継続できることです。
参照:『往診・訪問診療とは』(内閣官房)
訪問診療の定義と特徴
通院が難しい方に対して、医師があらかじめ立てた計画に沿って定期的に自宅や施設を訪れ、診察や処方、必要な検査などを行う在宅医療のことを指します。
往診のように急な要請に応じる臨時の診察ではなく、月に数回など決まった頻度で継続的に訪問する点が特徴です。慢性疾患の管理や療養生活のサポート、終末期医療など、長期的な視点で健康状態を見守る役割を担います。定期的に医師が訪れることで、体調の変化を早期に把握しやすく、入院をできるだけ避けて住み慣れた場所での生活を続けやすいです。
参照:『往診・訪問診療とは』(内閣官房)
往診と訪問診療の違いを理解するポイント
往診と訪問診療の違いを理解するポイントは受診のきっかけと診察の予定の立て方です。往診は、急な発熱や痛みなど、そのときの体調不良に応じて患者さんやご家族が依頼し、臨時で医師が訪問する診察です。一方、訪問診療は、通院が難しい方に対して、あらかじめ立てた計画に沿って定期的に医師が自宅や施設を訪れる仕組みです。急変時のその都度の受診が中心となるのが往診、慢性疾患の管理や終末期ケアなどを見据えた継続的な診療が訪問診療と押さえておくと、選び分けがしやすいです。
参照:『訪問診療と往診の違い』(日本訪問診療機構)
往診と訪問診療の使い分け

往診は、急な発熱や痛みなど今すぐ診てほしい場面で利用し、訪問診療は慢性疾患の管理や終末期ケアなど、定期的な医師の診察が必要な場合に選ぶとよいです。
往診が適しているケース
普段から在宅で生活している方に急な体調変化が生じ、今すぐ診てほしい状況になったときです。例えば、高熱や急な呼吸苦、強い腹痛・胸痛、意識がぼんやりしているなど、放置すると症状が悪化するおそれがある場合に利用を検討します。また、認知症や重度の障害、がんの終末期などで、救急外来への受診や入院を望まず、できる限り自宅で様子をみたい希望があるときにも往診が役立ちます。通院が難しい方に対し、必要な診察や応急的な処置を自宅で受けられる点が大きなメリットです。
訪問診療が適しているケース
通院が難しい状態が続いており、今後も継続的な医療的サポートが必要な方のケースです。具体的には、脳卒中後の麻痺や重度の心不全・呼吸器疾患、進行がん、認知症の進行などで外来通院が負担となっている場合が挙げられます。
定期的な診察や薬の調整、在宅で行う血液検査・点滴・酸素療法の管理、終末期の苦痛緩和などを、自宅や施設で継続して受けたいときに向いています。あらかじめ訪問回数や時間帯を相談して決められるため、生活のリズムを大きく乱さずに医療を受けられる点も大きな利点です。
在宅医療のなかでの位置付け
往診と訪問診療はいずれも在宅医療の重要な柱であり、通院が難しくなった方が、住み慣れた自宅や施設で生活を続けるための医療を支える役割を担います。往診は、急な体調不良などに対して臨時で医師が駆けつける、いわば在宅医療の救急的な受け皿として機能します。
一方、訪問診療は、定期的・計画的な診察を通じて病状の変化を早期にとらえ、悪化や入院を予防する継続的なかかりつけ医機能として位置付けられます。看護やリハビリ、介護サービスと組み合わせることで、在宅での療養生活を総合的に支える仕組みの中核です。

