●「生卵が潰せる」被告人の証言
法廷の被告人は、黒いシャツ姿で、背中まで伸びた髪を一つに束ねていた。本人によると、身長169センチ、体重53キロだという。
弁護人でさえ「不自然」と半ば認めざるを得なかった証言とは、どのようなものだったか。
傍聴席から見る限り、被告人は質問に対して要点をうまくまとめることが苦手で、自らに不利とも思える事情を口にする場面も何度かあった。
裁判長からも「聞かれたことを端的に答えて」「あなたが好き勝手しゃべる場ではないので」と繰り返し注意を受けていた。
たとえば、Aさんに対して過去に暴力を振るったことがあるかを問われると、「彼女が激昂して暴れるときにつかんだりはあった」と話した後、「僕は力が強いので」と話題を広げた。
さらに「男性基準でも握力が強い」「子どもから生卵を潰せるかと聞かれたことがあるが、それを自分はできる」「生卵は握力が90キロないと潰せないので」などと続けた。
弁護人が「人に比べて力が強いから、Aさんに暴力を振るったことはないという趣旨ですか?」と軌道修正し、「はい」と答えた場面もあった。
●「事故に見せかけて殺す」の説明
録音データに残っていた「事故に見せかけて殺す」という趣旨の発言について検察官から問われると、「同僚が事故で亡くなっている」「周囲で8人亡くなっていて前から自分が疑われていたが、それは誤解だったんだよね、という話をした」と説明した。
Aさんも同僚が亡くなっていることは証言していたが、「8人」「前から疑われていた」という話が、質問への答えとしてどのような意味を持つのかは判然としなかった。また「殺すぞ」という発言が、その誤解を解く文脈だったというのも、理解しづらいものだった。
事件当日に避妊しなかった理由について弁護人から問われると、「コンドームはつけられない。僕のサイズの問題で…」と話し始め、ここでも弁護人が遮った。
口論するような状況の後、なぜ同意の性交に至ったのかという事件の核心部分については「(性交をしないとAさんが)自分に価値がないとか自暴自棄になるので」と説明した。
判決では、量刑の理由として、被害弁償がされていないことや、反省の態度もまったく見られないことなどが挙げられた。
弁護人から司法に対する思いを尋ねられると、被告人は「腹立たしい」「がっかり」と答えた。さらに「裁判員を説得する自信はあるか?」と問われると「しないとしょうがない」とため息まじりに応じていた。
一方、Aさんは「警察が来たときは生きて帰れると思った」と証言した。同じ出来事について語りながら、法廷で向き合った二人には、まったく異なる現実が見えているようだった。
元夫側は判決を不服として控訴している。

