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自分自身でいられる場所を探して――こたび対談、その1|大平一枝,秀島史香

自分自身でいられる場所を探して――こたび対談、その1|大平一枝,秀島史香

家でも職場でもなく、自分自身でいられる場所を探して

大平 秀島さんは旅の達人でいらっしゃるから、そんなお話もあとでお伺いしたいのですが。また別のこたび話で言うと、父がちょっと体調が悪かった時に、特急あずさに乗って、実家のある長野と東京を頻繁に往復していたんですね。塩尻が実家の最寄駅なんですが、駅にワインビストロを見つけたんです。長野県なのでワイナリーが多いから、ワイン飲み比べのメニューがあったりして。親には「16時のあずさに乗る」といって帰るんですが、2時間くらいは駅で飲んで(笑) 東京に戻る前の「間(ま)」みたいなものが欲しかったんですね。

秀島 本書を読んでいると「エアポケット」という言葉がよく出てくるなという印象があります。最近よく「サードプレイス」という言葉も聞きますが、家でも職場でもない、でも自分自身でいられる場所をまわりにいくつ持てるかって、とても大切なことだなと思うんですよね。誰でもない時間を過ごすというか。たとえば日帰りであったり、自宅近くのバーに行くこともこたびになりますし。

大平 そうですよね。コロナ禍以降、一般の方を取材していて、メンタルの調子を崩された方ってやはり多かったんですね。でも共通しているのが皆さん、仕事が好きなんです。楽しいから頑張っちゃって、しかもコロナの負担もあって……という感じなのかなと。旅ってそういった、頑張りすぎて疲れていることへの手当てになるのではと。

秀島 そうですね、自分で自分を労わったり、色んな場所を開拓してみたり。私、通勤するときのバスの車窓から、いつも楽しそうだなと見ているお店があったんです。ある日、仕事が早く終わった時に一人で行ってみたんですよ。

大平 おお! すごい。

秀島 わざわざ降りて。時間にしてほんの30分足らずだったんですけど、小さくても叶えられた達成感というのでしょうか。毎日横を通って「いいな~」と思っていた、その「いいな」の中に自分がいるなと。自分を、自分の行きたいところに連れて行ってあげることができたなと。

大平 小さいことでも、自ら選び取ることが重なると、多分ちょっと豊かになりますよね。自分の引き出しが。

秀島 そうなんです。大平さんは、いま行けるとしたらどこに行きますか?

大平 実は、こないだ思いつきでですね、山梨県の石和温泉に行ってきたんですよ。ゴールデンウィークの最後の日。なぜ石和温泉かというと、去年、夫が仕事で行ったとき、20年乗ってた車がエンストを起こしてですね。

秀島 え、旅先でですか?

大平 そうなんです。それで手ぶらで帰ってきて、「車は?」って聞いたら廃車になったって。でもスタスタ帰ってきたから、そんな気軽に帰ってこられる場所なんだと(笑)

山梨なのでワイナリーが多くて、そこの方々もゴールデンウィーク中は忙しかったと思うんですが、最終日なので丁寧に接して下さって。すぐにもう1回行きたくなりました。熱海などもそうですが、昔、お客さんが多く栄華を誇った経験値があるので、サービスが一流なんですよね。鄙びていて、スタイリッシュな観光スポットではないですが。

秀島 熱海もいいですね。その手前の湯河原も、私大好きで。豪華に行こうと思えばどこまでも行けますが、わりとお手頃な観光ホテルもあります。幅が取れるといいましょうか。(後編に続く)

配信元: 幻冬舎plus

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