今回は、そんな場面に遭遇したある女性が、電車内で目にした出来事をご紹介します。
優先席に座っていた若い男性
西 由依さん(仮名・29歳)は、ある日の夕方、帰宅ラッシュの電車の中で優先席の前に立っていました。吊り革がわずかに揺れるたび、車内には疲れた空気が漂います。
「目の前には、優先席なのに足を大きく広げて座る若い男性がいて。スマホゲームに夢中なのかイヤホンもしないでピコピコと軽い音が周囲に漏れているし、マナー最低野郎だなと思いましたね」しかもそのすぐ横には、杖をついたおばあさんが立っており、杖に体重をかけながら身体を支えるのが辛そうに見えたそう。
「でも、誰も注意する人はいませんでした。私も含めて『言ったら面倒なことになる』そんな雰囲気だったんです」
誰も動けない、張り詰めた車内の空気
ですがその瞬間、優先席の近くに立っていた中年男性が静かに口を開きました。「その男性は真顔で『では、問題です』と言ったんです。司会者のようなハッキリとした口調でした。場違いに思える言葉なのに、彼の声には妙な落ち着きがあったんですよね」
その男性は、グレーのジャケットにシンプルなシャツという落ち着いた装いで、姿勢がよく、どこか人前で話し慣れたような雰囲気がありました。声はよく通る中低音で、張り上げているわけではないのに不思議と耳に届きます。語尾をきっぱりと切る話し方は、まるで本物のクイズ番組の進行役のように見えたそう。

