家族の介護に励むなかで、ふと疲れを感じたり、心に余裕がなくなったりすることはありませんか。
日々の身体介助や認知症への対応が続くほど、介護を担う方の心身には大きな負荷が積み重なりやすくなります。
厚生労働省の調査でも、こうした疲れを一人で抱え込むリスクが示されており、ご自身の生活を守る視点も欠かせません。
本記事では、介護疲れが起こる背景や心身の負担を軽減するための対処法、負担を軽くする公的サービスを解説します。
決して一人きりで頑張りすぎず、少しでも心を軽くするためのヒントとして役立ててください。

監修医師:
高山 哲朗(かなまち慈優クリニック)
理事長 高山 哲朗
平成14年慶應義塾大学卒業
慶應義塾大学病院、北里研究所病院、埼玉社会保険病院等を経て、
平成29年 かなまち慈優クリニック院長
【所属協会・資格】
医学博士
日本内科学会総合内科専門医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本医師会認定産業医
東海大学医学部客員准教授
予測医学研究所所長
介護疲れの原因とリスク

介護疲れとはどのようなものでしょうか?
介護疲れとは、毎日のケアによる身体的・精神的な負担が重なり、心身が限界に近づいている状態を指します。食事や排泄のサポートといった身体的な介助に加え、日々の見守りや服薬管理などの細やかな気配りも欠かせないものです。特に認知症の症状がある場合、夜間の対応や徘徊への対応も重なり、介護者が十分な休息を取れない夜も少なくありません。また、介護はいつまで続くか見通しを立てにくいという特性があり、知らず知らずのうちにストレスを溜めてしまいがちです。最初は無理なくできていたことでも、月日が流れるにつれて疲れが慢性化し、心や身体に不調が現れるケースも想定されます。誰よりも一生懸命に介護と向き合っている方こそ、ご自身の負担に気付きにくい傾向があるため、無理をせず自身の心身状態に目を向けることが大切です。
介護疲れの原因を教えてください。
厚生労働省の調査結果にも示されているとおり、介護疲れには身体・精神・経済という三つの要因が複雑に絡み合っています。身体面では、立ち上がりや移乗の介助による腰痛や、夜間のトイレ対応に伴う睡眠不足が大きな負担となるでしょう。精神面では、認知症に伴う予想できない言動への戸惑いや、社会からの孤立感、将来への不安などが重いストレスになります。さらに、介護のために仕事を離れることによる収入減や、医療費・介護用品の出費といった経済的な悩みも切実です。こうしたさまざまな問題が積み重なることで、介護を担う方の心身はより深刻な状況へと追い詰められるケースが見られます。
介護疲れのリスクを教えてください。
介護疲れを我慢し続けると、自身の心と身体の健康が損なわれるリスクが高まります。長い間ストレスや不眠にさらされることで、頭痛や高血圧といった目に見える身体症状が現れることも珍しくありません。また、気分の落ち込みや強い不安が消えない状態が続き、うつ病などの心の病につながる恐れもあります。疲労が限界を超えてしまうと、愛する家族に対してつい厳しい言葉を向けるなど、望まない接し方をしてしまうかもしれません。介護を支える方が健やかでいることは、大切な方の生活を支えることと同じくらい重要な意味を持ちます。だからこそ、早い段階で自分の疲れを認め、そっと誰かを頼ることが何よりも大切です。
介護疲れを起こしやすい人の特徴を教えてください。
責任感が人一倍強く、何事も完璧にやり遂げようとする優しい性格の方は特に注意が必要でしょう。なぜなら家族のことは自分一人で守らなければならないという強い思いが、結果的に自身を追い詰めてしまうためです。誰かに助けを求めることを、家族への裏切りや甘えのように感じてしまい、一人で抱え込んでしまう方も多くいます。また、仕事や育児と介護を同時に担っている場合は、物理的な休息時間がどうしても不足し、心身の回復が追いつきません。介護をする方にも限界があることを確認しておきましょう。
介護疲れの対処法と予防方法

介護疲れかどうかセルフチェックする方法はありますか?
介護疲れはゆっくりと進行していくため、まずは自分自身の小さな変化に目を向けることが大切です。例えばしっかり寝たはずなのに身体が重いと感じたり、以前よりイライラしやすくなったりしたときは心が疲れているサインかもしれません。今まで好きだったことに興味が持てなくなったり、食欲が落ちたりすることも、心身からの大切なサインといえます。こうした変化を自分が未熟だからと責めるのではなく、頑張りすぎている証拠として受け止めてください。無理をして耐えることを選ぶ前に、まずは今のありのままの状態を優しく見つめ直すことから始めましょう。
介護疲れになった場合の対処法を教えてください。
心身の疲れを感じたときに優先してほしいのは、その重荷を一人で背負い込まず、周囲に打ち明けることです。まずは親族と今の正直な気持ちを分かち合い、役割を少しずつ分担できる方法を一緒に探してみましょう。また、数日間利用できるショートステイなどを活用し、物理的に介護から離れる時間を作ってみましょう。自身が温かい食事をとり静かに眠る時間を確保することは、決してわがままではなく必要なことです。もし眠れない夜が続いたり、涙が止まらなかったりする場合は、我慢せずに専門の医療機関を頼ってください。
介護疲れを予防する方法はありますか?
健やかな介護生活を続けるための秘訣は、最初から頑張りすぎない仕組みを作っておくことにあります。一人ですべてを解決しようと思わず、介護保険サービスという専門職の力を積極的に借りてみましょう。デイサービスや訪問介護などを日々の生活に取り入れることで、自由な時間を定期的に持つことができます。また、たとえ短時間であっても、趣味を楽しんだり外の空気を吸ったりする時間は、心をリフレッシュさせる大切なひとときとなるはずです。ケアマネジャーなどの専門家を心強いパートナーと考え、困りごとをこまめに共有する習慣をつけましょう。
介護疲れの相談は何科を受診すればよいですか?
心が沈んで晴れない、あるいは不安で眠れないといった不調が続くなら心療内科や精神科を受診しましょう。もし頭痛や胃の痛みといった身体の不調が先に現れている場合は、まず身近な内科を受診するのもよい方法です。今の辛い状況を医師に詳しく伝えることでお悩みに合わせた専門の窓口を紹介してもらえることもあります。一人で悩みながら時間を過ごすよりも専門家の助けを借りることで、心身の負担を和らげやすくなるでしょう。

