薄毛治療には内服薬や外用薬などさまざまな選択肢があります。中でも「自分の髪を薄い部分に移す」自毛植毛は、仕組みや方法の違いが分かりにくい治療の一つです。この治療にはいくつかの術式があり、薄毛の範囲や希望する仕上がりによって適した方法は異なります。今回は、自毛植毛の基本や方法の違いについて、紀尾井町クリニック東京本院院長の中島先生に聞きました。
※2026年4月取材。

監修医師:
中島 陽太(紀尾井町クリニック東京本院)
2010年東邦大学医学部を卒業。東邦大学医療センター大森病院で手術加療を中心に研鑽を積み、泌尿器科助教を歴任。2021年より紀尾井町クリニックにて自毛植毛治療に従事。日本泌尿器科学会専門医・指導医。国際毛髪外科学会、日本泌尿器科学会、日本性機能学会、日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会に所属。著作『薄毛の治し方』(現代書林社)。男性ホルモン研究を通じてAGA治療に関心を深め、患者さん一人ひとりに最適な治療法を提案している。
自毛植毛ってどんな治療? 基本をチェック!
編集部
初めに、自毛植毛とはどのような治療か教えてください。
中島先生
自毛植毛とは、後頭部や側頭部などAGA(男性型脱毛症)の影響を受けにくい部位から自分自身の毛根を採取し、薄毛が気になる部分へ移植する治療法です。移植した毛根は元の性質を保ったまま生着(移植した組織が根付いて育つこと)し、その後も自然な成長が期待できます。医師が行う外科的治療で、生え際や毛流れまで考慮しながら自然な見た目を目指せる点も特徴です。
編集部
植毛治療が適応になる基準はありますか?
中島先生
診察で状態を確認しながら判断しますが、基本的には幅広い部位に適応できます。まずは内服薬や外用薬によるAGA治療を行い、改善が不十分な場合に検討されることが多いですね。また、やけどや外傷などで毛根が失われた部位、ひげや眉毛などにも有効です。
編集部
自毛植毛とAGA治療薬はどう違うのでしょうか?
中島先生
AGA治療薬は今ある毛を守り、進行を抑える治療です。一方、自毛植毛は毛根を移植する治療で、毛が少なくなった部分に直接ボリュームを補えます。どちらか一方だけでなく、併用するケースも多くあります。
編集部
移植した髪がAGAの影響で抜けてしまうことはないのでしょうか?
中島先生
移植するのはAGAの影響を受けにくい毛根のため、生着すれば元の性質を保ちやすく、長期的に生え続けることが期待できます。ただし、既存の毛はAGAの影響を受ける可能性があるため、全体のバランスを考慮した治療が重要です。
FUT法とFUE法はどう違う?
編集部
自毛植毛には、どのような方法がありますか?
中島先生
代表的なのはFUT法とFUE法の2つです。FUT法は後頭部の頭皮を帯状に切り取って毛根を採取する方法で、多くの株数を確保しやすい特徴があります。FUE法は専用の器具により毛根を一つずつくり抜いて採取する方法で、小範囲の植毛や傷を目立たせたくない場合に選ばれます。
編集部
FUT法は、どのような人に向いていますか?
中島先生
広い範囲にしっかり植毛したい人や、できるだけ多くの株数を確保したい人に向いています。効率よくドナー(移植するための毛根)を採取できるところが利点ですが、後頭部に線状の痕が残るため、髪型の希望も踏まえて検討する必要があります。
編集部
では、FUE法はどのような人に向いているのでしょうか?
中島先生
眉毛やひげ、頭髪の生え際や局所的な薄毛といった狭い範囲への植毛を希望する人や、頭皮が硬くて可動性が少ない人、ダウンタイムを短くしたい人に向いています。採取部には、採取した株の数だけ小さな点状の痕が残りますが(1000株なら1000個)、適正な採取数の範囲内であれば比較的目立ちにくいとされています。また、過去にFUT法を行った際の手術痕の修正にも用いられることがあります。
編集部
手術方法は自分で選べるのでしょうか?
中島先生
多くの場合、薄毛の範囲や必要な株数、ドナーの状態などを総合的に見て医師が助言を行い、その上で患者さん本人に決めてもらいます。将来的な薄毛の進行も考慮しながら、適した方法を選ぶことが欠かせません。

