最近、原因のわからない疲れや関節の痛み、発熱、皮膚の赤みなどが続き、
「もしかして全身性エリテマトーデス(SLE)では?」
と不安になっていませんか。
全身性エリテマトーデスは、膠原病のひとつです。膠原病とは、本来は身体を守るはずの免疫が自分の身体の一部を攻撃してしまい、全身に炎症を起こす病気の総称です。全身性エリテマトーデスは、皮膚、関節、腎臓、血液など、さまざまな場所に症状が出ることがあります。
この記事は、全身性エリテマトーデスの診断の際に何をみるのか、また、2019年に改訂された分類基準のポイントや主な検査項目を解説します。

監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学附属市民総合医療センター リウマチ膠原病センター)
【資格】
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本リウマチ学会 リウマチ専門医・指導医・評議員
日本リウマチ学会 登録ソノグラファー
日本リウマチ財団 登録医
日本アレルギー学会 アレルギー専門医(内科)
日本臨床免疫学会 免疫療法認定医
日本化学療法学会 抗菌化学療法認定医
日本エイズ学会 認定医
日本温泉気候物理医学会 温泉療法医・温泉療法専門医
日本骨粗鬆症学会 認定医
日本母性内科学会 母性内科診療プロバイダー
身体障害者福祉法第15条指定医(肢体不自由、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害)
インフェクションコントロールドクター
博士(医学)
診療科目
一般内科、リウマチ・膠原病内科、アレルギー科、感染症科
全身性エリテマトーデスの診断に用いる基準

全身性エリテマトーデスの分類基準にはどのようなものがありますか?
全身性エリテマトーデスの診断では、この症状があるから必ず全身性エリテマトーデス、のように一つだけで決まるわけではありません。皮膚の症状、関節の痛み、腎臓の異常、血液検査の結果などを組み合わせて、総合的に判断します。そのときに参考にされるのが、ACR分類基準、SLICC分類基準、EULAR/ACR分類基準といった国際的な基準です。ACR分類基準は、昔から使われている代表的な基準です。1997年に改訂されています。
蝶形紅斑、円板状皮疹、光線過敏症、お口の中の潰瘍、関節炎、胸膜炎や心膜炎、腎臓の障害、神経の症状、血液の異常、免疫の異常、抗核抗体など、11項目を確認します。このうち4項目以上に当てはまる場合、全身性エリテマトーデスの可能性を考えます。
SLICC分類基準は、2012年に作られた基準です。ACR分類基準よりも、全身性エリテマトーデスをみつけやすくするために作られました。
皮膚や関節、腎臓などに出る症状だけでなく、血液検査でわかる免疫の異常も併せて判断するのが特徴です。
EULAR/ACR分類基準は、2019年に発表された、現在よく知られているなかでは最も新しい分類基準です。
まず、抗核抗体という検査が陽性かどうかを確認します。そのうえで、症状や検査結果を点数化して、全身性エリテマトーデスらしさを評価します。
参照:
『Updating the American College of Rheumatology revised criteria for the classification of systemic lupus erythematosus』(Arthritis Rheum)
『Derivation and Validation of Systemic Lupus International Collaborating Clinics Classification Criteria for Systemic Lupus Erythematosus』(Arthritis Rheum)
2019年に改訂されたEULAR/ACR分類基準のポイントを教えてください
EULAR/ACR分類基準は、これまでご紹介したほかの分類のように、ただ症状を照らし合わせるだけでなく、最初に自己抗体の一種である抗核抗体が陽性であることを確認するということがポイントです。自己抗体とは、本来ならウイルスや細菌などの外敵を攻撃するはずの抗体が、自分の身体の成分を異物と間違えて反応してしまうものです。
最初に抗核抗体が陽性であった場合のみ、実際の症状や、血液検査の項目を、基準に照らし合わせて点数化します。
2019年基準では、全身性エリテマトーデスで起こりやすい症状や検査異常を10領域に分けて、それぞれ2〜10点で重みづけされています。
身体に出る症状(臨床項目)として、発熱、血液の異常、神経の症状、皮膚やお口の症状、胸や心臓のまわりの炎症、関節の症状、腎臓の異常の7つを確認します。
さらに、血液検査でわかる免疫の異常(免疫学的項目)として、抗リン脂質抗体という自己抗体が陽性であること、補体の低下、全身性エリテマトーデスに特徴的な自己抗体(抗dsDNA抗体、抗Sm抗体)の3つを確認します。
それぞれの項目は2〜10点で重みづけされており、同じ領域内に複数の項目があっても、最も点数の高い項目のみをカウントします。
例えば皮膚粘膜領域で複数の所見があっても、同じ領域内では最高点の項目だけを使います。さらに、感染症や薬剤性、ほかの自己免疫疾患など、全身性エリテマトーデス以外でより説明しやすい所見はカウントしません。
分類には、合計10点以上に加えて、少なくとも1つの臨床項目を満たす必要があります。
なお、この基準はあくまで分類基準です。診断を機械的に決めるものではありません。実際の診断では、医師が症状の経過や検査結果、ほかの病気の可能性も含めて総合的に判断します。
参照:『2019 European League Against Rheumatism/American College of Rheumatology classification criteria for systemic lupus erythematosus』(Annals of the Rheumatic Diseases)
抗核抗体の確認はなぜ必要なのですか?
全身性エリテマトーデスは、本来身体を守るはずの免疫が、自分の身体を攻撃してしまう病気です。そのため、まず自分の身体に反応する抗体が出ているかをみる必要があります。
抗核抗体は、全身性エリテマトーデスで陽性になる頻度が高い自己抗体なので、EULAR/ACR分類基準では最初のチェック項目になっています。
診断のための検査と評価項目

診断ではどのような検査を行うのか教えてください
全身性エリテマトーデスの診断では、まず血液検査で抗核抗体などの自己抗体を調べます。併せて、炎症の程度、白血球や血小板の数、貧血の有無、補体の低下がないかを確認します。また、全身性エリテマトーデスは腎臓に炎症が起こることがあるため、尿検査で蛋白尿や血尿がないかを調べることも重要です。
さらに、必要に応じて、胸や心臓の画像検査、皮膚や腎臓の組織検査を行うこともあります。
自己抗体や補体の検査では何がわかりますか?
自己抗体や補体の検査では、身体の免疫が自分自身を攻撃するような反応を起こしていないかを調べます。全身性エリテマトーデスは、抗核抗体という検査が陽性になることが多く、さらに抗dsDNA抗体や抗Sm抗体といった、全身性エリテマトーデスに特徴的な自己抗体がみつかることがあります。
免疫の反応が強く起こると、補体という成分が使われて少なくなることがあります。補体が低い場合は、全身性エリテマトーデスを疑う手がかりになります。
ただし、これらの検査だけで全身性エリテマトーデスと決めるわけではなく、症状や尿検査、血液検査などを併せて判断します。
ほかの膠原病との鑑別はどのように行いますか?
全身性エリテマトーデスは、関節痛、発熱、皮疹、だるさなど、ほかの膠原病でもみられる症状が出ることがあります。そのため、ひとつの症状だけで判断するのではなく、どの症状が目立つのか、いくつかの症状がどのように重なっているのかを確認します。併せて、自己抗体の種類、補体の低下、血液検査や尿検査の異常などを調べ、全身性エリテマトーデスに合う経過かどうかを総合的に判断します。

