「お酒を飲まないから」「太っていないから」と、肝臓の健康を気に留めていない人は多いのではないでしょうか。しかし現在、日本人の約3人に1人が「脂肪肝」であると言われています。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれており、悪化しても症状が出にくいため、気づかないまま深刻な状態になってしまうことが少なくありません。だからこそ「未病」の段階でサインに気づき、進行を防ぐことが重要です。
今回は舛森(ますもり)先生に、肝臓がボロボロになったときに体が出す「7つの危険なサイン」と、そのメカニズムについて詳しくお話を伺いました。

監修医師:
舛森 悠(YouTube医療大学)
2019年旭川医科大学卒業後、札幌にて初期研修をおこない、函館稜北病院総合診療科へ。北海道内の3次救急を担う救命救急センターなどを経て、現在は千葉大学大学院 医学薬学府 先進予防医学共同専攻 博士課程にて研究に従事。並行して北海道での地域医療に貢献し、登録者86万人を誇る「YouTube医療大学」を運営。一般社団法人とまりぎケア代表理事、総合診療専門医、新家庭医療専門医、認知症予防専門医、医師会認定産業医。
≫肝臓が壊れる寸前にだけ現れる危険サイン7選、必ずこうなります。脂肪肝、放置すると「かさぶた」のように硬くなりがんのリスクも
編集部
健康診断で「脂肪肝」と言われても、軽く考えてしまう人が多いと聞きます。しかし、放置するとどうなってしまうのでしょうか?
舛森先生
脂肪肝を「少し太ったせいかな」と軽く済ませてしまう人は確かに多いのですが、そのまま放置すると「肝硬変」という状態に進行してしまいます。一度肝硬変になってしまうと、元に戻すことは難しい状態です。
編集部
改善できないとは怖いですね。肝硬変とは、具体的にどのような状態なのですか?
舛森先生
肝硬変とは、文字通り「肝臓がカチカチに硬くなった状態」です。皮膚を擦りむいたとき、治る過程でかさぶたになって硬くなりますよね。これと同様に炎症と修復を何度も繰り返して、肝臓全体がどんどん硬くなっていく――。そんなイメージを持ってもらえるとわかりやすいでしょう。一度肝硬変になってしまうと、日本人の死因としても非常に多い「肝臓がん」に進行するリスクが跳ね上がってしまいます。
【知っておきたい最新情報】
これまで「非アルコール性脂肪肝(NAFLD)」と呼ばれていた病気は2023年に、「MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)」に名称変更されました(世界の主要な肝臓学会[米国・欧州・ラテンアメリカ]による合同声明)。糖尿病・肥満・脂質異常症などのリスクを抱える人の脂肪肝を、より積極的に拾い上げようという考え方への転換に基づく変更です。「お酒を飲まない=安心」というイメージから、「メタボリックシンドローム系のリスクがあれば肝臓も要注意」という時代に変わってきています。(Rinella ME et al. AASLD/EASL/ALEH Multisociety Delphi Consensus, Hepatology, 2023)
7つのサインのうち3つは「皮膚」に表れる
編集部
改善できなくなる前に異変に気づくためのサインを教えてください。
舛森先生
全部で7つありますから、一つずつ説明しましょう。
肝臓が悪いときに出る危険なサインの1つ目は「手の赤み」です。以前、70代の男性が「最近畑をいじるようになってから手が赤くなってきた」と受診されました。手を見た瞬間に肝臓を疑い、検査の結果、脂肪肝が進行した肝硬変と診断されました。
編集部
手が赤くなることと肝臓に、どのような関係があるのでしょうか?
舛森先生
手の赤みには「エストロゲン」という女性ホルモンが関係しています。男性の体内にも少量のエストロゲンが存在していて、肝臓が悪くなるとエストロゲンを処理(解毒)できなくなり血中濃度が上がります。エストロゲンには毛細血管を拡張させる作用があるため、皮膚のすぐ下にある毛細血管が広がって、手が赤く見えるのです。手だけでなく、体全体に「クモ状血管腫」といって、クモの巣のように血管が拡張するサインが表れることもあります。
編集部
ほかにも皮膚に表れるサインはありますか?
舛森先生
2つ目のサインは「皮膚のかゆみ」です。血液(赤血球)が壊されるときに「ビリルビン」という物質が産生されます。通常、ビリルビンは肝臓で分解されて「胆汁」となり、十二指腸に合流して腸の中へ流れていきます。しかし肝臓が悪くなると、ビリルビンが腸に流れず血液中を巡り始め、皮膚のかゆみとして出現します。
また、食べ物や細胞の老廃物を肝臓で解毒できなくなり、毒素が体に溜まることでもかゆみが起こります。アレルギーや湿疹と違い、「発疹や赤みがないのにひたすら痒い」という場合は、肝臓が原因である可能性が高いと考えられます。
編集部
ビリルビンが及ぼす影響はほかにもあるのでしょうか?
舛森先生
それが3つ目のサイン「皮膚が黄色くなる(黄疸)」です。便が茶色、または黄色っぽい色をしているのは、肝臓で作られた胆汁(ビリルビン)が腸の中に出ているからです。肝臓が障害されてビリルビンが腸に出られなくなると、血液中を巡って皮膚に沈着し、皮膚や白目の部分が黄色くなります。
黄疸は、膵臓がんや胆管がんなどによって、管に石が詰まったり、胆汁の流れが滞ったりしている危険なサインでもあるので、白目が黄色いと感じたらすぐに病院を受診してください。

