悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が高いと、心臓や血管への影響が注目されがちです。実は、排尿トラブルや前立腺がんのリスクが高まる可能性も指摘されています。最近では、若年層でそうした症状や疾患を抱える人の増加が報告されており、決して高齢者だけの問題ではありません。現状と対策について、平間クリニック 内科・泌尿器科院長の住友先生に聞きました。
※2026年5月取材。

監修医師:
住友 誠(平間クリニック 内科・泌尿器科)
1991年3月、慶應義塾大学医学部を卒業後、慶應義塾大学病院および関連病院に勤務。1998年10月、コーネル大学泌尿器科学教室にリサーチフェローとして留学。防衛医科大学校准教授(泌尿器科学講座)、愛知医科大学教授(泌尿器科学講座)、藤田医科大学教授(腎泌尿器外科学講座)、藤田医科大学がん医療研究センター副センター長(兼務)、藤田医科大学病院がんセンターセンター長(兼務)、平間クリニック非常勤医師を経て、2024年1月、平間クリニック 内科・泌尿器科を開業。日本泌尿器科学会専門医。
悪玉コレステロールと前立腺の関係
編集部
悪玉コレステロールが前立腺にも影響するというのは、本当でしょうか?
住友先生
はい、本当です。悪玉コレステロールの多い状態が続くと、血管の内側に脂質がたまり、血流が悪くなります。こうした変化は心臓や脳だけでなく、前立腺周囲の血管にも影響を及ぼします。血流が低下すると組織に慢性的な炎症が起こりやすくなり、前立腺肥大症などの排尿トラブルの一因になる可能性が指摘されています。
編集部
前立腺肥大症とコレステロールには、どのような関係があるのでしょうか?
住友先生
前立腺が肥大する原因は、完全には分かっていません。ただし、加齢や肥満、遺伝的要因など複数の要素が関わっていると考えられています。脂質異常症もその一つです。悪玉コレステロールが増えて脂質異常症が起こると、前立腺組織の慢性的な炎症が引き起こされ、肥大化が進むと考えられています。さらに、脂質異常症は男性ホルモンの働きを強め、前立腺を肥大させる可能性も報告されています。
編集部
前立腺のトラブルは、どのような症状として表れますか?
住友先生
代表的なのは、尿が出にくい、尿の勢いが弱い、残尿感がある、トイレが近いといった症状です。夜間に何度もトイレに起きる夜間頻尿もよく見られます。これらの症状は加齢による変化と思われがちですが、生活習慣病が背景にあるケースもあるため、症状が続く場合は医療機関で相談することが重要です。
編集部
コレステロールが高い人は、注意が必要なのですね。
住友先生
はい。脂質異常症がある人は、心血管疾患だけでなく排尿トラブルにも注意が必要です。特に、中高年では前立腺肥大症が起こりやすいため、コレステロール管理を含めた生活習慣の見直しが大切です。健康診断で脂質異常症を指摘された場合は放置せず、適切な治療や生活改善を行うことで予防につなげましょう。
悪玉コレステロールと前立腺がん
編集部
悪玉コレステロールは、前立腺肥大症以外にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
住友先生
悪玉コレステロールは動脈硬化を進めるだけでなく、前立腺がんとの関係も指摘されています。特に、悪性度の高い前立腺がんとの関連を示す報告もあります。もちろん、脂肪の摂取量が多く、悪玉コレステロールが多いからといって、必ず前立腺がんになるわけではありません。ただし、悪玉コレステロールが多いなどの脂質異常症は全身の血管や代謝に影響するため、前立腺の疾患を考える上でも無視できない要素です。
編集部
なぜ、前立腺がんのリスクが高まるのでしょうか?
住友先生
前立腺がんは、脂質との関係が深いがんの一つだからです。がん細胞は増殖するためにエネルギーや材料を必要とします。その材料の一つとして、前立腺がんは脂質を取り込み、利用します。「脂肪の摂取量が多いと前立腺がんのリスクが高まる」というのは、この仕組みが関係していると考えられています。また、男性ホルモンはコレステロールを基に作られるステロイドホルモンであり、前立腺がん細胞の多くはこの男性ホルモンの影響を受けて増殖します。そのため、脂質代謝の乱れが、前立腺がんの進行や悪性度に関わる可能性も指摘されています。
編集部
食生活が前立腺がんに関係するということですね。
住友先生
はい、その可能性があります。実際、欧米では前立腺がんの罹患率が高いことが知られており、背景の一つとして、動物性脂肪の多い食生活が考えられています。高脂肪食、特に肉類や乳製品などに含まれる飽和脂肪酸の取りすぎは、肥満や脂質異常症にもつながります。前立腺がんは遺伝的な要因だけでなく、食事、肥満、生活習慣といった環境要因も関わるため、日頃の食生活を整えることは予防の観点からも大切です。
編集部
前立腺がんのリスクが高いのはどんな人ですか?
住友先生
家族に前立腺がんの人がいる場合は、リスクが高くなることがあります。また、家族内では食事の嗜好(しこう)や生活習慣が似ることも多く、動物性脂肪の取りすぎ、肥満、脂質異常症などが重なりやすい場合もあります。医師に脂質異常症を指摘された人は、まず適切に治療を続けることが大切です。スタチンなどの脂質異常症治療薬については、一部の研究で前立腺がんの再発や進行を抑えたという報告もありますが、がん予防薬として確立した効果は証明されておらず自己判断で使うものではありません。気になる人は、泌尿器科で相談しましょう。

