●「授乳する権利」を守る法律はない
一方で、現行法には、公共の場で授乳する権利を明示的に保障した法律はありません。
母子保健法は、母性や乳幼児の健康を守ることを目的としており、次世代育成支援対策推進法も、子どもを安心して育てられる環境づくりを掲げています。
しかし、いずれも「公共の場で授乳できる権利」を具体的に保障したり、授乳を妨げることを禁じたりする規定までは設けていません。
厚生労働省も、保健医療従事者向けの「授乳・離乳の支援ガイド」を示し、母乳育児を支援する考え方を示していますが、法的拘束力のあるルールではありません。
●授乳できる「場所」の整備は進む
一方で、授乳できる環境づくりは行政の指針として進められています。
国土交通省の「建築設計標準」や「バリアフリー整備ガイドライン」では、授乳・搾乳できる個室や、おむつ交換台、給湯設備などを配置することが「望ましい」とされています。
つまり、日本では「公共の場で授乳する権利」を直接保護する制度よりも、「安心して授乳できる場所」を整備する方向で環境づくりが進められてきたといえます。

