橋本病、慢性甲状腺炎と診断された方や、甲状腺機能が低下している方は、爪が割れやすい、表面がカサカサしてツヤがない、二枚爪になりやすいといった症状が出ることがあります。爪は皮膚の一部が変化してできた組織で、全身の代謝や栄養状態、血流、乾燥の影響を受けやすい部位です。橋本病が進行して甲状腺機能低下症になると、皮膚の乾燥や脱毛と同じように、爪にも変化が現れることがあります。
この記事は、橋本病によって爪に症状が現れる理由や特徴、自宅でできるケア、ほかの病気との見分け方や受診の目安を解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医・指導医、日本緩和医療学会認定登録医、禁煙サポーター
橋本病で爪に現れる症状の特徴

橋本病になると爪にどのような変化が現れますか?
橋本病で甲状腺ホルモンが不足すると、爪のツヤがなくなる、割れやすくなる、伸びるスピードが遅くなるなどの変化が現れることがあります。橋本病は、自己免疫の異常によって甲状腺に慢性的な炎症が起こる病気です。進行して甲状腺機能低下症になると、全身の代謝が低下し、皮膚は乾燥しやすくなります。毛髪が細く抜けやすくなるのと同じように、爪にも影響がおよびます。
爪がもろくなったり割れやすくなったりするのはなぜですか?
爪がもろくなる主な理由は、甲状腺ホルモンの不足によって爪を作る働きや指先の血流、皮膚のうるおいが低下するためです。甲状腺ホルモンは、全身の代謝を支えるホルモンです。不足すると新しい細胞を作る働きが鈍くなり、爪の材料となるケラチンというタンパク質も十分に作られにくくなります。その結果、丈夫な爪が育ちにくくなります。
さらに、甲状腺機能低下症は汗や皮脂が減り、皮膚や爪が乾燥しやすくなります。うるおいを失った爪は弾力が低下し、先端が欠ける、ひびが入る、層状にはがれて二枚爪になるといった変化が起こりやすくなります。また、甲状腺機能低下症は、貧血を伴うことがあり、指先への酸素や栄養の供給が滞ることも一因と考えられます。
橋本病で多くみられる爪の特徴を教えてください
橋本病による甲状腺機能低下症は、乾燥、もろさ、成長の遅さが爪の変化としてみられます。代表的な変化には、次のようなものがあります。もろく、割れやすい
先端が欠けやすい
二枚爪になりやすい
乾燥して表面のツヤが乏しい
爪がなかなか伸びない
縦の筋が目立つ
厚く硬くなる、または薄くなる
甲状腺機能低下症が進むと、粘液水腫と呼ばれるむくみが生じることがあります。これは皮下組織に特定の成分がたまることで起こるむくみで、指で押してもへこみにくいことが特徴です。手足全体が腫れぼったくなり、むくんだ指先に乾燥して割れやすい爪がみられる場合、甲状腺機能低下症に伴う変化として考えられます。ただし、爪の異常だけで原因を決めることはできません。
爪の症状への対応と注意点

橋本病による爪の症状にはどのように対応すればよいですか?
橋本病による爪の症状は、甲状腺機能低下症の治療と、乾燥や刺激を減らす日常のケアを組み合わせることが基本です。爪の変化の背景に甲状腺ホルモンの不足がある場合は、主治医の指示にしたがってレボチロキシンナトリウムを服用し、ホルモンの不足を補います。甲状腺機能が整ってくると、皮膚や毛髪、爪を作る働きも少しずつ回復しやすくなります。日常生活においては、乾燥を防ぐケアを続けます。手洗いや入浴の後は、ハンドクリームやネイル用のオイルを、爪の根元や周囲の皮膚になじませます。爪がもろい時期は、爪切りの衝撃でひびが入ることがあります。爪やすりを使い、一定方向にやさしく削ると負担を減らせます。水仕事や掃除の際は、洗剤による乾燥を避けるため、ゴム手袋を使うとよいでしょう。
橋本病以外の病気で似た爪の症状が出ることはありますか?
橋本病以外でも、貧血や栄養不足、糖尿病、感染症、皮膚疾患などで爪がもろくなったり変形したりすることがあります。例えば、鉄欠乏性貧血は、爪が薄くなり、中央がへこんで反り返るスプーン爪、さじ状爪がみられることがあります。亜鉛欠乏症でも、爪の変形や萎縮、爪の周囲の炎症などが起こることがあります。糖尿病のある方は、神経障害や血流障害の影響で足の爪が変形したり厚くなったりしやすくなります。また、爪白癬、いわゆる爪水虫などの感染症は、爪が白く濁る、厚くなる、ボロボロ崩れるといった変化がみられます。乾癬などの皮膚疾患が爪に症状を起こすこともあります。爪の異常には複数の原因があるため、すべてを橋本病の影響と決めつけず、変化が続く場合は病院で確認しましょう。
医療機関を受診すべき爪の状態はどのようなものですか?
爪の変色、強い変形、痛み、化膿、全身症状を伴う場合は、病院で相談してください。軽い乾燥や年齢に伴う縦筋だけであれば、保湿ケアを続けながら様子をみることもあります。ただし、爪がボロボロに崩れる、黄色や白、黒などに強く変色する、爪の周囲が赤く腫れて痛む、膿が出るといった場合は、爪白癬や細菌感染、爪周囲炎などが関係している可能性があります。また、爪の異常に加えて、強い倦怠感、冷え、無気力、体重増加、顔や手足のむくみ、声のかすれなどが目立つ場合は、甲状腺機能低下症の悪化が関係している可能性があります。爪のトラブルが長引き、全身の不調も重なっている場合は、内科や内分泌内科で甲状腺機能、貧血、栄養状態などを確認してもらいましょう。爪だけの感染や変形が強い場合は、皮膚科での評価も検討します。

