「空を見ていなかった」。2拠点生活が変えた食と体
藤井さんは、長野にセカンドハウスを持っています。きっかけとなったのは、更年期に体調を崩していた本のデザイナーさんが長野で「不調が治った」と話してくれたことでした。
セカンドハウスに通い始めると、変化はすぐに現れました。悩んでいた手の湿疹が行くと治まりました。野菜の旨みが立つから調味料は基本塩で、醤油、味噌を使えば十分になりました。
「食生活がシンプルになると、暮らし方もシンプルになって。それによってとても心が緩んで豊かになるんだなっていう風に感じてます」
もともと大自然にそれほど興味はなく、都会の方が過ごしやすいと思っていたという藤井さん。しかし料理の仕事は常に3〜4ヶ月先の季節のレシピを作るため、旬とずれた食材で試作を繰り返していました。頭ではわかっていても、旬の感覚を実は掴めていなかったといいます。長野で四季の食材を手に取りながら料理していくうちに、見えてきたことがありました。
「料理って、自分が頑張っていくもんじゃなくて、食材を引き出すように料理することが1番いい。素材から旨みを上手に出せば、出汁がいらない。余分な調味料もいらない。そうするともっとプライベートの料理が楽になりました」
「誰かが作ってくれたから、ご馳走になる」
「おいしいとは何か」と聞かれた藤井さんは、こう答えます。
「シンプルなことが1番いいし、頑張りすぎないところがいい。お料理っていうのは、作ったものを押し付けてはいけない。なんてことないお料理でも、この人のために作ったものっていうのは、どんなものでもご馳走で、その人にとっての心の中の栄養にもなっていくと思っています」
子どもの頃はご飯だけで何杯でも食べられた食いしん坊が、今は「作ることが好き」に。番茶を煮出すとき、グラグラ沸騰させると酸味が出る。ふっと沸騰したら火を弱めて優しく煮出すと、酸味が出ない。「ほんとにシンプルなことだけど、ちょっとだけ気を使うことで、びっくりするぐらいおいしくなる」そういう小さな発見が、藤井さんにとって作ることの楽しさに繋がっています。
そして、ずっと心の中に温め続けている夢があります。
「食堂みたいな、居酒屋みたいな、料理屋みたいなの、やりたいなっていうのがずっとあったんです。長野県松本市って、伏流水がたくさん流れていて、土を掘れば水が湧き出てくるらしいんです。そういう水の豊かなきれいなところで、地元で採れた野菜とか、湧き水で料理する料理屋さんをしたいです」
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第76回・第77回(5月8日・15日配信) 藤井恵さん
料理研究家・管理栄養士/女子栄養大学(現・日本栄養大学)栄養学部卒業。在学中から日本テレビ系列「キユーピー3分クッキング」のアシスタントを務め、フードコーディネーターをへて、料理研究家として独立。日々のごはんのおかずからお菓子、おつまみまで幅広く手がけ、そのおいしさと作りやすさには定評があり、テレビや雑誌、書籍なので活躍中。著書『藤井弁当』(学研プラス)『海苔弁31』(誠文堂新光社)『藤井恵の夏ごはん』(オレンジページ)『腸を動かす朝ごはん 休ませる晩ごはん』(暮しの⼿帖社)『からだ整えおにぎりとみそ汁』『50歳からのからだ整え2品献立』(主婦と生活社)『藤井恵 おいしいレシピができたから』『藤井恵 繰り返し作りたい定番料理』(主婦の友社)『藤井恵さんのむずかしくないお魚レシピ』(講談社)
Instagram: @fujiimegumi1966
クックパッド株式会社 小竹 貴子
料理愛好家・ 料理の楽しみ共創室 部長/創業期から参画し、初代編集長としてメディアづくりに携わる。現在は、料理家や生産者といった食のつくり手の声を届ける活動を行っている。「日経ウーマンオブザイヤー2010」受賞。プロの技術や食材の背景にある物語を、暮らしに馴染む言葉で伝えることをライフワークに、生活者の目線で食の楽しさを探求している。
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