五十嵐さんが最初に病院を受診するに至った理由は、背中の違和感が続いたためでした。2022年2月に15cmの腫瘍が見つかり、その2カ月後の手術で「後腹膜脂肪肉腫(脱分化型)」と判明しました。その後、再発や転移を経て、現在は抗がん剤による治療を続けています。抗がん剤の副作用で体調が万全ではないなか、ご自身の経験と読者へ伝えたいメッセージを語ってもらいました。
※2025年10月取材。
体験者プロフィール:
五十嵐恵子
群馬県在住、1971年生まれ。家族構成は夫と息子、愛犬トイプードル。診断時の職業は建築設計事務所勤務。2022年2月に背中の鈍痛で受診し、左腎臓(後腹膜)に15cmほどの腫瘍が見つかる。同年4月に左腎臓と副腎、腫瘍を摘出、後腹膜脂肪肉腫(脱分化型)と判明。その後再手術や肺への転移があり、放射線治療後、現在は抗がん剤治療を受けながら、動ける範囲で愛犬の散歩や家族のお弁当作りなどに取り組んでいる。
腫瘍がかなり大きくなるまで自覚症状がなかった
編集部
はじめに後腹膜脂肪肉腫という病気について、医師からはどのような説明がありましたか?
五十嵐恵子
「後腹膜脂肪肉腫は10万人に6例未満の希少がんで、可能であれば手術をするのが一番適している。特に悪性度の高いあなたの脱分化型は進行が早く、浸潤もしやすく、再発や転移が多い」と説明を受けました。
編集部
受診前に初期症状や違和感などはありましたか?
五十嵐恵子
腫瘍がかなり大きくなるまで、自覚症状はほとんどありませんでした。受診する半年くらい前から、なんとなく左側の背中が痛いような違和感があり、仕事中の椅子が合わないのかなと思って様子を見ていました。骨の痛みではない感覚があったため、整形外科ではなく、エコー検査ができる外科や内科を受診しました。
編集部
五十嵐さんが後腹膜脂肪肉腫と診断されるまでの経緯を教えてください。
五十嵐恵子
最初に行ったクリニックのエコー検査で「何か大きなものがある」と言われ、CT検査で15cmほどの腫瘍が見つかりました。その後、大きな病院の泌尿器科を紹介され、2カ月後に手術を行って詳しく調べてもらい病名が確定しました。手術時には、腫瘍が最初の診断時から倍近くに大きくなっていました。
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
五十嵐恵子
「まさか自分が」と思いましたが、すぐに気持ちを切り替えました。腫瘍が見つかったとき、すでにかなりの大きさだったため、ショックを受けるよりも「一刻も早く手術したい」と焦る気持ちのほうが強かったです。
手術、再発、転移、抗がん剤の副作用… でも病気は奪われることばかりじゃない
編集部
生活には、どのような変化がありましたか。
五十嵐恵子
病気になる前はフルタイムで働いていましたが、手術後は長時間の労働が難しくパート勤務に変更しました。さらに再発・転移後は長時間座っているのが困難になり、退職しています。入院中や体調が悪いときは、高校生の息子が食事を作ってくれています。小さな頃から料理が好きで手伝ってくれていたので、本当に助かっています。
編集部
病気発覚後から現在まで、どのような治療をしましたか。
五十嵐恵子
2022年4月の1回目の術後、すぐに大量に嘔吐し、腸閉塞(イレウス)の疑いで再入院しました。1カ月後のCT検査で再発が発覚し、再手術で脾臓全摘、膵臓と腸と横隔膜の一部を摘出しました。2024年12月には肺への転移が判明し、正月休み中は左胸の激痛で動けなくなりました。肺に水がたまり、ドレーンを入れて水を抜くことで落ち着きました。手術はリスクが大きいと診断され、放射線治療の後に抗がん剤治療を行うことになりました。
編集部
現在も抗がん剤治療中ですか?
五十嵐恵子
はい、現在も引き続き抗がん剤治療を行っています。再発してから常におなかの重苦しさがあり、抗がん剤の副作用などによる腰椎圧迫骨折も抱えているため、1日の8割は横になって過ごしています。手術を2回経験し、再発・転移後は放射線治療とドキソルビシンという抗がん剤を投与しました。現在は、エリブリンメシルという抗がん剤に変更して治療を続けています。
編集部
何が心の支えとなっていますか?
五十嵐恵子
愛犬のトイプードルと、SNSで知り合った同じ病気の仲間です。退院して玄関を開けた瞬間、愛犬がしっぽを振って飛びついてくれました。体調が悪い日は静かに寄り添ってくれ、この子の存在が私の毎日を支えてくれています。また、同じ病気の仲間とやり取りすることで、「一人じゃない」と感じながら前を向くことができました。

