京急本線は29日朝、金沢文庫駅で安全確認を行った影響で一部列車に運休や最大20分程度の遅れが出ている。週の始まりの通勤・通学ラッシュを直撃したこの事態にもかかわらず、SNSには「え、こんな事ある?みんな普通にしてるけど」「乗客はみんな超冷静に吊り革掴んだりスマホ見たりして『普通』な顔してるのがシュール」といった、意外なほど冷静な利用客の様子に驚く声が相次いだ。なぜ人々はこれほど淡々と日常を維持できたのだろうか。
金沢文庫駅の構内でトラブルが発生したのは午前7時42分頃。金沢文庫駅に停車した上り列車の増結側車両で、本来開くべきホーム側ではなく、線路側である反対側のドアが完全に開いてしまったのだ。
実際にその現場に居合わせた乗客からは、Xに「乗車(のってた)してた京急。発進の時に車輪空転しまくってて大丈夫か?と思ったら、今度はホームと逆側のドアが開いた。 本当に大丈夫か?」という生々しい困惑の声が上がった。また、別の乗客からは「京急、反対側のドア開いた上、職員が気づいたんじゃなく乗客に教えられて知ったとかマ?」という驚きの情報も瞬く間に拡散された。
このトラブルにより、京急線内では空港線直通の品川-羽田空港第1・第2ターミナル間の上下線や、横浜駅から久里浜線に直通する三崎口までの下り線の一部列車に遅れが生じ、一部の列車が運休。相互直通運転する都営地下鉄浅草線なども最大20分程度遅れ、ダイヤが乱れている。都営浅草線の利用者からも「浅草線が遅れてると思ったら 乗客の方々が平然としてるのが何とも…」と、直通先の混乱と車内の様子を伝える投稿が見られた。
危険な状況での「異様な冷静さ」
通常、こうした鉄道の重大インシデントが発生すると、鉄道会社への厳しい批判の声が殺到する。SNS上でも「2側ドア開扉とか普通にアウトだろ。京急は訓練されてるから…とか美談にすな。 どっちも乗客が落ちたら人身事故につながるんよ」と、安全対策の不備を指摘する投稿が見られた。また、「京急…最近ひどいよほんとに ホームと反対側のドアが開くってヒューマンエラーだし重大インシデントじゃない?」と危機感を募らせる声もあった。
しかし、今回の件で最も多くの人が驚き、注目したのは、危険の渦中にいた乗客たちの「意外なほど冷静な態度」。車内の様子を伝える投稿の中には
「安全確認の影響で、ホームがない側のドアが開いてしまいました(通常はホーム側だけ開く)。でも乗客はみんな超冷静に吊り革掴んだりスマホ見たりして『普通』な顔してるのがシュール。OPによると後でドア閉めて8分遅れで発車したそうです」
という光景が広がっていたという。ドアの向こうは遮るもののない線路であるにもかかわらず、「え、こんな事ある?みんな普通にしてるけど」と、パニックを起こすことなくいつも通りの通勤風景を保っていたのだ。
「正常性バイアス」と「同調バイアス」
なぜ、乗客たちはこれほどまでに冷静でいられたのだろうか。この状況を心理学的な観点から検討してみると、緊急時に人間が陥りやすい2つの罠、すなわち「正常性バイアス」と「同調バイアス」の可能性が非常に高いことが分かる。
電車のドアが反対側に開くという危ないトラブルが起きたとき、乗客がみんな落ち着いていたのは、人間の心にある2つの思い込みが原因かもしれない。1つ目は、予想外のピンチが起きたときにこれくらいなら大したことないやと勝手に安全だと思い込んでしまう心の仕組み(正常性バイアス)だ。2つ目は、周りの人が静かにしているのを見てみんなが騒いでいないから、自分も静かにしていようと周りに合わせてしまう心理(同調バイアス)である。この2つが同時に働くと、本当はとても危険な状態なのに、誰も逃げたり騒いだりしなくなってしまうのだ。
一見するとパニックを起こさない「大人の対応」に見えるが、実は命の危険を正しく認識できなくなっている危険な状態だったと言える。

