最期は住み慣れた自宅で過ごしたいと望む方や家族は少なくありません。しかし、在宅看取りを実現するためには、医療や介護の体制づくりや家族間での話し合いなど、事前に準備しておくべきことがあります。
本記事では在宅での看取りの準備について以下の点を中心に紹介します。
在宅看取りの基礎知識
在宅看取りに必要な準備
在宅看取りで後悔しないための視点
在宅での看取りについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

監修医師:
高山 哲朗(かなまち慈優クリニック)
理事長 高山 哲朗
平成14年慶應義塾大学卒業
慶應義塾大学病院、北里研究所病院、埼玉社会保険病院等を経て、
平成29年 かなまち慈優クリニック院長
【所属協会・資格】
医学博士
日本内科学会総合内科専門医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本医師会認定産業医
東海大学医学部客員准教授
予測医学研究所所長
在宅看取りの基礎知識

在宅看取りとはどのようなケアを指しますか?
在宅看取りとは、人生の最期が近づいた方に対して、住み慣れた自宅で最期の時間を過ごせるよう、医療や介護のサポートを受けながら見守るケアを指します。かつては自宅で亡くなる方が大多数を占めていましたが、医療の発達とともに病院や介護施設で最期を迎える方が増え、現在では自宅で亡くなる方は以前と比べて大きく減少しています。
在宅看取りでは、無理な延命治療を行わず、本人が自分らしく過ごすことを優先的に考えます。医師や看護師が定期的に訪問し、体調の変化に応じた医療的なサポートを行いながら、痛みや苦痛を和らげることに重点が置かれます。
また、食事や排泄、入浴などの日常生活のケアに加え、本人と家族の精神的なサポートも欠かせない要素です。慣れ親しんだ環境のなかで、家族とともに穏やかな時間を過ごせることが、在宅看取りの大きな意義といえるでしょう。
ターミナルケアや緩和ケアとの違いを教えてください
在宅看取りと混同されやすい言葉に、ターミナルケアと緩和ケアがあります。それぞれの違いを整理しておきましょう。
【ターミナルケアとの違い】
ターミナルケア(終末期医療)との主な違いは、医療行為を行うかどうかという点にあります。ターミナルケアは、点滴や酸素吸入などの医療的処置を行いながら、残された生活の質を高めることを目的とし、主に医療機関で提供されます。
一方、看取りは食事や排泄の介助や入浴、褥瘡(じょくそう)の予防など、日常生活のケアを中心とする点が特徴です。両者は明確に区別されるものではなく、状況に応じて組み合わせて行われることもあります。
【緩和ケアとの違い】
緩和ケアは、がんなどの重篤な疾患と診断された時点から、治療と並行して身体的、精神的な苦痛を和らげることを目的とします。終末期に限らず、病気の進行に関わらず提供される点が特徴です。
一方、看取りは死が間近に迫った時期に行われ、積極的な治療は控えながら、自然な形で最期を迎えられるよう支援します。緩和ケアが主に医療機関で提供されるのに対し、看取りは自宅や介護施設など、生活に近い環境で行われる点も異なります。
在宅で看取りを始める前に考えておくべきことは何ですか?
在宅看取りを検討する際は、メリットとデメリットの両面を理解したうえで、家族全員で話し合っておくことが大切です。
【在宅看取りのメリット】
住み慣れた自宅で療養できるため、本人が心穏やかに過ごしやすい
日々の過ごし方に自由度があり、本人らしい生活を維持しやすい
家族と過ごす時間が増え、コミュニケーションが深まる
訪問診療、訪問看護を活用することで、通院や移動の負担を軽減できる
【在宅看取りのデメリット】
医療スタッフが常駐していないため、日常のケアを家族が担う場面が生じる
急変時に医療スタッフが到着するまで時間を要する場合がある
身体的、精神的な負担が家族に集中しやすい
自宅では対応できる医療設備に限界がある
在宅看取りは、本人の意思を尊重しやすい反面、家族の協力体制が不可欠です。誰が中心となってケアを担うか、緊急時にどう対応するかといった点を事前に家族全員で共有しておくことが、後悔のない看取りにつながります。
在宅看取りに必要な準備

家族が事前に決めておくべきことはありますか?
在宅看取りを始めるにあたって、家族が事前に話し合い、共有しておくべきことがいくつかあります。いざというときに慌てず対応できるよう、以下の点を整理しておきましょう。
【本人の意思を確認し共有する】
在宅看取りで大切なのは、本人と家族全員が自宅での最期を理解し、納得していることです。
本人の希望として、以下の点を言葉にしておくことが重要です。これはACP(アドバンス・ケア・プランニング)とも呼ばれます。
・どこで最期を迎えたいか
・救急車を呼ぶかどうか
・延命処置(人工呼吸、心臓マッサージ、胃ろうなど)をどうするか
・苦痛を和らげることを優先するか
【緊急時の対応を決めておく】
急変時に家族が判断に迷わないよう、連絡先と対応の基準をあらかじめ確認しておくことが大切です。
・担当医、訪問看護師への連絡方法(夜間休日を含む)
・救急車を呼ぶべき状況のめやす
・家族内での役割分担
事前に本人の意思や緊急時の対応を整理しておくことが、家族の不安を和らげ、本人にとっても穏やかな最期につながります。
在宅で看取る際に、必要な医療や介護体制はどのように整えたらいいですか?
在宅看取りを安心して行うためには、医師や訪問看護師、ケアマネジャーが連携したチーム体制を整えることが重要です。それぞれが医療、介護、サービス調整の役割を分担しながら、本人と家族を支えます。
在宅医は、夜間と休日を含む24時間対応が可能かどうかの確認が大切です。
往診と訪問診療は別であり、訪問診療は24時間常に管理していることとなります。いざというときに往診を依頼しても対応は難しい一方、訪問診療で定期的に診療を行っている場合には急な転帰で死亡した場合にも医療機関での対応が可能となります。外来のみの場合は亡くなって、往診となったとしても1日すぎていれば検視を行う必要があります。
このように、在宅での看取りを行う場合、訪問診療を行っている医療機関であることが望ましいため、かかりつけ医が訪問診療もおこなっているのかを確認し、難しいようであれば紹介してもらうか、地域包括支援センター(包括医療センター)や在宅医療相談窓口に相談するとよいでしょう。
また、「その日から訪問診療をお願いしたい」と依頼しても対応してもらえないことが多い傾向にあります。「まだ大丈夫」と思って直前となるよりも、医療機関のスタッフともお互いをよく知る時間を作るためにも、早めに依頼しておくことが肝心です。
さらに、ケアマネジャーは、在宅看取りの経験がある方を選ぶと、状況に応じたサポートを受けやすくなります。
ケアマネジャーも地域包括支援センターが相談の窓口です。
家族だけで24時間対応することは難しいため、訪問看護や訪問介護などのサービスをうまく組み合わせ、無理のない体制を整えましょう。
在宅で看取る場合、自宅環境はどのように整えればいいですか?
自宅環境を整える際は、本人の状態に合わせて段階的に見直していくことが大切です。主なポイントは以下のとおりです。
・介護ベッドや車いす、ポータブルトイレなど、状態に応じた介護用品を揃える
・転倒を防ぐため、滑り止めマットの設置や段差の解消など室内の安全対策を行う
・寝たきりになった場合は、数時間おきの体位交換で床ずれを予防する
・状態が重くなるにつれ、訪問入浴や訪問介護などのサービスを組み合わせる
必要な用品やリフォームの範囲は本人の状態や自宅の構造によって異なるため、ケアマネジャーに相談しながら無理のない環境づくりを進めましょう。家族だけで抱え込まず、専門職のサポートをうまく活用することが長期的な在宅看取りを支える基盤です。

